ドラマに描かれていた定子との情事に溺れる一条天皇のイメージについては、平安時代後期成立の歴史物語『栄花物語』などに、中国・唐王朝時代の玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋を重ねているのでしょう。玄宗皇帝と楊貴妃のエピソードをまとめた『長恨歌(ちょうごんか)』は、平安時代の人々の間でも広く親しまれている書物でした。
『光る君へ』の道長はあくまで情け深い「正義のヒーロー」ですが、史実では天皇と定子の前に立ちふさがる存在であった道長をどのようにドラマの中では美化していくのか、大石静先生の脚色が楽しみというしかない状況です。
また、ドラマでは中宮定子の職御曹司入りを、藤原行成(渡辺大知さん)が発案するという描かれ方でしたが、史実における発案者はよくわからないものの『枕草子』では、清少納言の同僚たちが行成のことをあまりよく言わないのに対し、清少納言だけは彼を弁護して「なほ奥ふかき心ざまを見知りたれば」――私は、彼(行成)の心の奥深い部分までをよく知っているから……などと書いている部分があるのです。こういう人間関係を、ドラマでは「発案者・行成」という形で反映したのかもしれませんね。
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