近代的な意味での「金本位制度」とは少し異なるかもしれませんが、貨幣の価値が含有される金や銀などの量で決定され、どこの国で発行されたかどうかは関係がなかった時代特有の現象といえるでしょう。

 さて、ドラマでは越前にたどり着いたまひろに、当地で新たなロマンスの芽生えがあるかと思いきや、周明(松下洸平さん)はどうやら欲得ずくで彼女に近づいてきただけのようですね。一方で、親戚のおじさんのような立ち位置だった藤原宣孝(佐々木蔵之介さん)が、越前を訪れ、為時がいない間にまひろと親交を深め、最後には求婚までして京都に戻っていったのには驚きました。周明とまひろの仲睦まじい姿を見ていて、危機感に駆られたのかもしれませんね。

 史実では、紫式部と宣孝の間に文のやりとりがあったことはわかっているのですが、彼女が京都を発つ前に宣孝からプロポーズされ、越前と京都の間で文のやり取りをしていたのであろうと考えられます。まぁ、ドラマのように宣孝が越前を訪れた可能性も否定はできないでしょうが……。

『紫式部集』という彼女の歌だけを集めた和歌集によると、越前にいる紫式部に宣孝が手紙で「春になれば雪も溶けるように、私に対して閉ざしているあなたの心も溶けるのでは」と書いてきたので、紫式部は「春なれど 白嶺(しらね)の深雪(みゆき) いや積もり 溶くべき程の いつとなきかな」――春になりましたが、越前の山には雪がいっそう高く積もってしまって、溶けることなどありませんよ(私はあなたには心を開いたりしません)という歌を送りつけたことなどが書かれています。