◆4人の誠実な芝居
この4人の誠実な芝居がいい。
謎の良子を演じる上野樹里は、17年前、二十歳のときの出世作で、先日舞台化もされた『のだめカンタービレ』では、クセの強い、天才ピアニストを大胆にのびのび演じるイメージの一方で、何を考えているかわからないミステリアスな雰囲気も醸せる俳優。
今回も、良子は惑星難民Xなのかそうではないのか、わからない瞳をしていた。
林遣都は、無精髭(ぶしょうひげ)を生やして、すこしやさぐれた週刊誌記者を演じている。彼の瞳はいつだって純粋に光っていて、惑星難民Xを偏見に満ちた記事化するのかしないのかと思ったとき、きっとしないに違いないと信じたい気持ちにさせる。
先日、音楽劇『浅草キッド』では浅草で修業していた若き頃のビートたけしを演じるほど、生活者を演じるに長けているから、悩める若者・笹の共感度が上がる。
リン・イレンは台湾の実力派で、野村周平は偏見のないやさしい好青年を好演している。
ほかに、バカリズムがごくふつうの編集者の役で出演していたり、酒向芳にふわっと髪のボリュームがあったりして、どこか先入観を覆すキャスティングや、滋賀県彦根市で主にロケを行い、彦根の街を東京の街として撮っているということも、私たちの心の尺度を図る仕掛けのような気もして……。