◆ふたりの心模様に目が離せなくなる
『隣人X』は“心”の物語であり、現代社会で誰もが少なからず抱えている隣人への警戒心や偏見をいかに取り払うか問いかける物語なのだ。
そういう意味では、笹は素直に自己開示し、良子は素直に笹の第一印象を信じて、彼の誘いに応じる。なんて、すてきなふたりであろうか。
とはいえ、現実では見知らぬ人の声がけには注意したほうがいい。いや、警戒しないといけない世界を失くす努力を、これから心がけていきたいと思う。という自戒はさておく。
良子は仕事の忙しい笹を支え、安らぎを与え、笹は良子が優秀にもかかわらず、自己肯定感が低く、控えめすぎることを気にかけ、もっと自信や夢を持つように助言する。ふたりが一緒にいれば幸福になりそうだが、笹には惑星難民Xのスクープが必要で、それがふたりの仲を阻(はば)んでいく。
もし、良子がほんとうに惑星難民Xだったら笹はどうするのか? 惑星難民Xは人間を決して傷つけないと安心していいのだろうか……。
謎は謎を呼び、待ち構えるのは、意外な展開だ。
映画の開始、1時間くらいで、がらっと様相が変わっていくところで、気持ちがぐっと持っていかれ、あとはもう、ぐんぐんと加速していく物語と、笹と良子の心模様に目が離せなくなる。