財産分与の例外とは?

(写真=PIXTA)

ただし、財産分与にはいくつか例外があります。

例えば、親が亡くなり、妻が相続人となって財産を得たケース。結婚後に得た資産ではありますが、これは、妻固有の財産となります。配偶者である夫は、その相続には貢献していないとみなされるからです。

夫の定年退職前に離婚し、離婚後に退職金を受け取る場合、婚姻期間に相当する分のみが財産分与の対象となります。例えば、夫の勤続年数が30年で、退職金を受け取ったとしましょう。婚姻期間がそのうちの25年だった場合には、25年の勤続年数に対して支払われる退職金が、財産分与の対象となるのです。

婚姻中や離婚後に一方の配偶者が得た財産でも、相手がその財産の取得に貢献しているかどうかで、財産分与の対象になるかを判断することになります。

離婚時、夫に借金があったら財産分与の対象になる?

(写真=Marcos Mesa Sam Wordley/Shutterstock.com)

それでは、夫に借金があった場合に、その借金も財産分与の対象になるのでしょうか。ここからは、夫が作った借金、あるいは組んだローンは、共有財産になるかどうかを考えてみます。なお、前提として、いずれも婚姻中に作った借金・婚姻中に組んだローンとします。

財産分与の対象になる借金、ならない借金

例えば、夫が趣味やギャンブルのために借金をした場合には、共有財産にはなりません。離婚後も、夫が自分の責任で返済し続けることになります。ただ、借金をして家族で使うための生活必需品を買った場合には、共有財産になります。

一方、夫が借金をする際に妻が「連帯保証人」になっていた場合には、その借金の使い道がたとえ夫の趣味・ギャンブルであっても、妻に返済義務があります。もし夫が返済しない場合には、離婚後であっても妻が返済しなければならないのです。これは、妻が連帯保証人になったことで、借金が夫婦の問題ではなく、お金を貸した人・借りた人との関係になるからです。

財産分与の対象になるローン、ならないローン

住宅ローンや車のローンの返済が終わっていなければ、それぞれ共有財産になりますから、夫・妻ともに、離婚後も支払い続けることになります。ただし、夫がローンを組んで夫だけが車を使っているなどのように、車を家族で使っていない場合、離婚後は夫だけに返済義務が生じます。

なお、住宅ローンで問題になるのは、離婚後の住宅の処分です。ローンが残っている場合、住宅を売却してローンの返済に充てることが一般的です。もしローンを返済して現金が残れば、それを夫婦で折半できますし、まだローンが残っていれば、足りない分を夫婦が共同で返済していくことになります。

ただし、離婚後にどちらかがその家に住み続ける場合は、やや煩雑になります。残りの住宅ローンを住み続ける人がすべて払うか、他の預貯金によって調整するか……夫婦間での話し合いが必要になってきます。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)

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