日本でも離婚が珍しくなくなった昨今、行政書士である筆者は離婚に関するご相談を受けることがよくあります。相手が離婚に同意してくれない・親権でもめているなど、夫婦の間で紛糾している場合は別として、すでに両者で離婚に合意している場合で最も多いご相談は、金銭にまつわることです。特に、ある程度の結婚年数がある夫婦の場合には、財産分与でもめるケースが多いのです。

ここでは、配偶者に借金があった場合の財産分与について、考えてみます。

離婚するときに起きやすい3つの金銭問題

(写真=Vika Zhuyko/Shutterstock.com)

離婚の際に夫婦間でもめる金銭問題には、次の3つがあります。

1. 慰謝料

慰謝料は、離婚の原因を作った配偶者が、相手に支払う金銭です。例えば、夫の浮気が原因で離婚をする場合、夫から妻へ慰謝料を支払うことになります。金額は、浮気の年数などによって算定しますが、基本的には、夫婦の話し合いで決めます。

2. 養育費

未成年の子どもがいた場合、夫婦のどちらかが親権者になります。親権者にならなかった親から親権者になった親へ支払われるのが、この養育費です。この金額も夫婦の話し合いで決めますが、家庭裁判所が統計を基に目安となる金額を算出していますので、それを参考にする場合が多いでしょう。

3. 財産分与

財産分与は、基本的に夫婦で婚姻中に築いた財産を折半することです。よく相談者から「妻が専業主婦の場合でも、財産を半分もらえますか?」という質問をされます。たとえ夫だけが働き、妻が専業主婦で収入がなくても、離婚すれば婚姻中の財産を半分に分けることになります。これは、妻が家事などで夫を支えることにより、夫が働くことができたという妻の貢献を評価する考え方によるものです。

財産分与の2つの基本的な考え方

(写真=PIXTA)

財産分与には、2つの基本的な考え方があります。

一つ目は、婚姻前に築いた財産は、その人の財産ということです。例えば、妻が結婚前に働いて得た給料・賞与などを預金していた場合には、その預貯金は妻だけの財産となります。したがって、離婚の際には、財産分与の対象ではありません。

二つ目は、婚姻中に夫あるいは妻が築いた財産は、基本的に夫婦二人の「共有財産」とみなされます。したがって、離婚の際には、基本的にこの共有財産を夫婦で折半、つまり2分の1ずつ分けることになります。例えば、婚姻中に支払われた夫の退職金についても、夫と妻の共有財産となり、財産分与の対象となります。