寛弘2年11月15日に起きた内裏の火事はとくにひどく、天皇の権威の象徴たる「三種の神器」のうち、「八咫鏡」が破損してしまったという記述が道長の日記『御堂関白記』に出てきます。当時、すでに道長の長女・彰子(ドラマでは今後、見上愛さん)が一条天皇の中宮となっており、以前の連載でもお話したように、それは道長が定子から中宮の位を奪って、皇后として形だけ祭り上げ、わが娘を中宮にするという実にあくどい手段を使った末のことでしたから、迷信深かった道長は余計に天罰のようなものを感じ、恐れおののいたようですね。
ガレキの下から「八咫鏡」が出てきたのは17日になってからで、破損した鏡をそのまま神器として扱うか、作り直すかで議論がありましたが、とりあえず新しい辛櫃(保存ケース)に収める時、破損したはずの鏡が太陽のように光り輝いたなどの理由から、そのまま神器として取り扱うことが決定したそうです。
現在でも皇位継承に不可欠な「三種の神器」ですが、天皇や皇族方でさえ絶対に直接見ることは許されていないのに対し、少なくとも藤原道長の時代くらいの天皇や公卿たちは、大火事という惨事の結果にせよ、神器の「姿」を垣間見ることくらいはできていたのかもしれません。
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