(本記事は、西村利孝氏監修・自由国民社の著書『あなたの年金がすべてわかる2019年版』自由国民社、2018年9月1日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『あなたの年金がすべてわかる』シリーズ】
(1)年金ちゃんと分かってる?ここできちんとおさらいしよう
(2)なぜ今のうちに「もらえる年金額」を知っておく必要があるのか?

※以下、書籍より抜粋

老後の年金と受給

しっかり知っておきたい「3階建て」の年金のしくみ

老後の年金の受給で注意することは、受給資格を満たしたら必ず請求することです。

また、もらい忘れがないように、受給要件をしっかりチェックしてください。

特に年金加入期間(10年以上)がたりず年金が受給できないという場合、特例などにより受給が可能な場合もありますので、あきらめずに日本年金機構などで相談してください。

年金制度と老後の年金のしくみ

年金には老齢年金、障害年金、遺族年金がありますが、「老齢年金」は年金制度の基本であり、多くの人の関心があるのも、老後の年金であるこの年金でしょう。

老齢年金は、国民年金から「老齢基礎年金」、厚生年金から「老齢厚生年金」が支給されます。

なお、厚生年金の加入者は国民年金にも加入していますので、「老齢基礎年金」も受給することができます。

老後の年金制度は3階建て

老後の年金は、加入していた年金から支給がなされ、どんなに長生きしても終身にわたり受給することができます。年金制度は、老齢基礎年金をベースとした3階建ての構造です。

1階部分の年金

1階部分は基礎年金で、国民年金、厚生年金保険のどの年金に加入している人も受給できる年金で、「老齢基礎年金」が給付されます。

2階部分の年金

老後の年金には、国民年金からの「老齢基礎年金」、厚生年金保険からの「老齢厚生年金」があります。

厚生年金保険加入者は、 同時に国民年金にも加入していますので、「老齢基礎年金」も受給できます。 

なお、公務員等の共済年金は平成27年10月1日より厚生年金に統一されました。

2階部分は、民間サラリーマンやOLが加入している厚生年金保険から「老齢厚生年金」が受給できます。公務員の共済組合等加入者は「退職共済年金」でしたが、平成27年10月1日以降の厚生年金と統一後の受給者は老齢厚生年金となります。

なお、国民年金の上乗せ年金として「国民年金基金」(任意加入)、および「確定拠出年金(個人型)」があり、2~3階部分を構成しています。

3階部分の年金

3階部分は、民間サラリーマン等の場合、「厚生年金基金」あるいは「確定給付企業年金」、「確定拠出年金(企業型)」で、いわゆる企業年金といわれるものです。

なお、公務員等の共済組合加入者の場合には、退職共済年金の「職域部分」がこれに該当しますが、平成27年10月以降の厚生年金との統一後は廃止され「年金払い退職給付」が創設されました。

民間の生命保険会社や信託銀行などから多くの個人年金の商品が売り出されていますが、保険金(掛金)や老後の年金額などは規約で定まっています。

加入している人は受給年齢が来たら、請求してください。

民間の個人年金も、もらい忘れがないよう注意しましょう。

年金額は早めに把握し生活設計をしよう

定年等で会社を退職する場合、退職前に老後の生活設計をしておく必要があります。

そのためには、まず老後の生活費のベースである自分の年金額を把握することが重要です。

「どうせ、調べたところで年金額が多くなるわけでもないし」といった態度では、老後の生活が無計画なものとなり、いずれ破綻してしまいます。

そうしたことがないように、年金収入をベースにした、しっかりした生活設計が必要なのです。

今の生活費から退職後の生活費を推測し、将来の年金収入や貯蓄などを計算・検討することにより、老後の生活設計ができるはずです。

例えば、試算した結果、年金収入が不足する場合には生活のレベルを落とす、あるいは当分の間、雇用継続や再就職で働き続ける、などの対策も必要となるでしょう。

「老齢基礎年金」の受給要件

年金を受給できる加入期間は10年

従来、老齢基礎年金を受けるためには、年金加入(保険料納付済)期間が25年以上あることが必要でしたが、平成29年8月1日からは10年以上に短縮されました。
 
この受給資格期間は、以下の期間を合計して計算します。

  1. 国民年金保険料納付済期間(厚生年金・共済組合の加入期間含む)や免除された期間
  2. サラリーマンの期間(厚生年金や共済組合などの加入期間)
  3. 第3号被保険者期間
  4. 学生納付特例期間
  5. 納付猶予期間
  6. 合算対象期間(カラ期間) 「カラ期間」とは、国民年金に任意加入できる人が加入しなかった期間で、昭和 61年3月以前にサラリーマンの配偶者だった期間などです。受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。

    受給資格期間の特例

    前述のとおり、受給資格期間が10年に短縮され、これまでの受給資格期間が25年未満で年金が受け取れなかった人も10年以上あれば受け取ることができ、年金受給者は増加します。

    60歳になるまでに年金を受給するための10年の受給期間を満たすことができない人は、70歳になるまで加入できます。

    ただし国民年金に加入されている65 歳以上70歳未満の人について、受給資格期間が10年を超えた場合、任意加入被保険者の資格を失います。65 歳以上での加入は、受給資格期間確保のためのみの制度で、受給額を増やすための制度ではないからです。

    「老齢基礎年金」の受給額

    老齢基礎年金は、保険料納付済期間が40年の場合には、満額の年77万9300円(月額6万4941円=平成30年度=前年度と同額)が支給されます。

    しかし、国民年金が誕生したのは昭和36年4月1日で、60歳まで加入しても40年にならない場合があります。そこで生年月日により、加入可能年数の短縮措置がとられています。

    保険料納付済期間が10年~40年未満の場合には、保険料納付済期間を加入可能年数で除して、それに77万9300円をかけて年金額を計算します。

    付加年金

    「付加年金」は、国民年金加入者が月額400円の保険料を納めることによって、将来の年金額に付加年金が加算されるというものです。年金額(年額)の算式は、以下のとおりです。

付加年金(年額)=200円×付加保険料納付月数

ただし、国民年金加入者でも、国民年金基金に加入している人は、付加保険料を納付することはできません。

第3号被保険者(厚生年金保険加入者の被扶養配偶者)も同様です。

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

監修者:西村利孝(にしむら としたか)
社会保険労務士・行政書士。大阪府茨木市出身。金融機関で7年間勤務後、政府系公益法人に勤務。昭和63年1月に西村経営労務事務所を設立。東京アカデミー、日本宅建等講師7年を経て、労働法律、年金、知的財産権取引方面で活躍。顧問は銀行等上場企業を中心の400社。著書に「失業マニュアル」共著(ごま書房)、「敷金と原状回復」(全国賃貸住宅新聞)がある。

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