給与所得者の特定支出控除とは?

せっかくの機会ですから、知っておいていただきたいのが「給与所得者の特定支出控除」です。

特別支出控除の使い方

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先ほど、所得税は次のような手順で計算するとご紹介しました。給与所得控除が「必要経費」にあたるのに対し、特別支出控除は2の「所得控除」となります。

▽所得税の計算方法
1.収入から「必要経費」を差し引く
2.①から「所得控除」を差し引く
3.②に税率を掛ける

「所得控除」には特別支出控除のほか、配偶者控除、扶養控除などさまざまな種類があり、要件を満たせば利用することができます。全ての人が差し引ける「基礎控除」もここに含まれています。

特別支出控除の役割

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給与所得控除というのは、金額や用途に関してはあいまいなもので、状況によっては、一定額以上のお金を仕事上の理由で使うこともあるかもしれません。そのような場合に用意されているのが、「給与所得者の特定支出控除」です。

これは、給与所得控除額の1/2を超える金額を仕事上の一定の理由で使ったときに、その差額を特定支出控除として、給与所得控除に上乗せして差し引ける制度です。

特別支出控除はいくらまで使えるか

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先ほどの年収400万円の事例でいえば、給与所得控除額は134万円ですから、その半額67万円を基準として、67万円を超えた支出を「特定支出控除」として差し引けます。

仮に仕事上での支出が100万円あったなら、33万円が特定支出控除額となりますね。

特別支出控除の対象となる支出

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特定支出控除の対象となる支出には次のようなものがあります。

・通勤費
・転勤のための転居費
・単身赴任等の時の帰宅旅費
・職務に直接必要な研修費
・職務に直接必要な資格取得費
・単身赴任者などが勤務地から自宅へ移動する際の帰宅旅費
・65万円までの職務に必要な図書費
・65万円までの職務に必要な衣服費
・65万円までの職務に必要な接待交際費

ただし、利用するには会社(給与支払者)が発行した証明書が必要となります。また、会社などから非課税の補てんがある場合は該当しません。

特別支出控除の注意点

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一見、存分に活用できそうな制度に思えますが、実際には給与所得控除額の半分を超えるような業務上の支出があるようなケースはまれで、利用できるのはごく一部の方でしょう。

特殊な事情のある業界や会社に勤めている方や、そうでなければ、2013年から「職務に必要な資格取得費」の対象に、弁護士・税理士・公認会計士といった資格も追加されたため、これらの資格取得を目指す場合でしょうか。

いずれにしても、確定申告が必要となるため、一般的な会社員には少し使いにくい制度でもありますが、今後、より活用しやすくなるような改定がおこなわれる可能性もあります。そもそも、制度を知らなければ利用はできませんので、知っておいても損はないでしょう。

「そんな制度もあるんだ」程度でかまいませんので、通常の給与所得控除とともに覚えておきましょう。

この制度は確定申告をすることで利用できるもので、そのうえ、利用できるケースはかなり限られます。ただ、該当すればぜひ活用すべき制度です。

給与所得控除が縮小される?

ここまで説明してきた会社員の「経費」である給与所得控除ですが、今、縮小されようとしていることはご存知でしょうか?2020年から、給与所得控除の改正が行われることが、下記の内容で決まりました。

(画像=DAILY ANDS編集部作成)

年収850万円までの方であれば、控除額が一律10万円引き下げられ、それ以上になるとさらに控除額は下がります。また上限適用になる年収が1,000万円超から850万円超に、上限額が195万円に引き下げられます。

給与所得控除が縮小されると、それだけ経費が少ないとみなされ、つまり「増税される」ということになりますよね。

基礎控除は多くの人にとって減税、高所得者には増税

ちなみに、誰でも使える「基礎控除」も改正されます。

(画像=DAILY ANDS編集部作成)

基礎控除は、所得(給与収入などから経費を差し引いた後の金額)が2,400万円を下回る人にとっては従来の38万円から48万円に拡大されますから「減税」となります。一方、所得が2,400万円を超える高所得者に対しては「増税」となります。

また給与所得控除、基礎控除の改正と合わせて、一定の調整措置も施される予定となっています。今後の改定情報をしっかり見ていきましょう。

自分の給与所得と給与所得控除を計算してみよう

(写真=goodluz/Shutterstock.com)

税金の制度は、毎年何らかの変更がなされています。会社員に対して増税の傾向があるということが何を示しているかといえば、会社員であっても税金やお金についてしっかり勉強し、ご自身の家計や資産を守る努力が必要な時代になってきたということなのです。

まずは、自分の給与所得と給与所得控除額を計算することから始めてみてください。この給与所得控除を皮切りに、税金やお金の知識を少しずつ身につけていきましょう。

文・婚活FP山本/DAILY ANDS

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