そしてこの間に彼らの音作りは、80年代までのポップス的なライトなものから、中低域が太い重厚なバンドサウンドへと密かに大幅なモデルチェンジを果たしていったのだ。特に、オリコンシングルチャート上で初の1位を記録した1993年の(1)迎夏シングル「夏を待ちきれなくて」、そこから連続で1位となった(2)盛夏シングル「だって夏じゃない」を80年代の楽曲と比較して聴けばこの変化は明確であり、これらのヒットによりTUBEはロックバンドとして改めて大衆に認知されるとともに、その個性・キャラクターが確立されたと言ってよいだろう。

 その後、アルバム『終わらない夏に』(‘94)ではデビュー以来プロデューサーを務めてきた長戸大幸がプロデュースから外れ、『ゆずれない夏』(‘95)からは小野塚がサウンドアドバイザーとしてクレジットされなくなる。この時期以降、彼らは90年代後半にかけて徐々にシンセサイザーの比重を落としながら、一層ハードロック寄りの、ヘヴィさを持つサウンドへとさらなるモデルチェンジを図っていった。加えてミキシングにおいても、90年代のロックサウンドのトレンドを押さえて、よりドライで硬質な音へと変化していったことで、本稿の冒頭で述べたようなアンビエント~バレアリック的な側面はほぼ消失することになる。

 いわゆる「ビーイング・サウンド」的なシンセサイザーとバンドサウンドの掛け合わせがトレンド外になりつつあった当時、この変化は時代をサバイブする上で必然の選択だったとも言える。いち「TUBEファン」兼「アンビエントファン」の筆者としては寂しい面もあるが、彼らが時流に合わせて一層音楽性を深め、現在に至るまで安定した活動を続けていることに感謝したい。

 最後に、バレアリックなサウンドを持つスタジアムロックとして最高峰の完成度を持つ、彼らの最大のヒットシングル「夏を抱きしめて」(‘94)の魅力について改めて触れよう。