年を重ねると、親の将来、そして遺産相続がより身近に感じられるでしょう。今回は、子どものうちの誰かが親と同居していた場合の遺産分割で、ポイントとなる点を詳しくご説明いたします。
 

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そもそも遺産を分割する方法とは?

(写真=AndreyCherkasov/Shutterstock.com)

そもそも遺産はどのように分割するのか。まずこの点を簡単に説明いたします。被相続人の遺産を相続人が分割する方法は3つあります。

  1. 遺言書の内容のとおり
  2. 相続人で話し合い
  3. 相続人がお互いもめたくない場合には法律で決められたとおり(これを「法定相続分」といいます)

「法律で遺産の分け方が決まっているんじゃないの?」と思われている人がいるかもしれません。まさにそのとおりで、例えば、父親が4,000万円の財産を残して亡くなり、母親と娘2人が相続人だとします。民法という法律では、配偶者である母親に2分の1、残りを子どもで等分するという決まりになっていますから、この分割方法でいけば、母親には2,000万円、娘2人には1,000万円ずつが相続されることになります。

しかし、もし父親が遺言書を残していて、そこに「妻に3,000万円、娘にはそれぞれ500万円ずつを相続させる」と書かれていた場合には、「基本的には」そのような分割方法になります。これは、被相続人の最後の遺志を尊重するべきだという考え方からきています。

ただし、相続人全員の了解があれば、決して遺言書の内容にとらわれることはなく、話し合いによって分割方法を決めることもできます。ですから、先程の説明で「基本的には」と申し上げました。

私の行政書士としての経験から申し上げますと、よほど理不尽な内容の遺言書、例えば「遺産の全部を○○に相続させる」などでなければ、被相続人の遺志を尊重しようという風潮が強いように思います。

親と同居していると相続で有利になるかどうかは「生前の関わり方」

(写真=PIXTA)

では、本記事のタイトルになっている「親と同居している場合、相続で有利になるのかどうか」、について考えてみます。結論からいうと、相続人と被相続人との生前の「関わり方」によっては、遺産の配分が変わる可能性があります。

例えば、姉妹がいて、姉は結婚して実家を出ていて、妹は未婚で実家に残っているとします。このままでは、特に遺産の分割に影響が出てくることはありません。

しかし、妹が父親の介護をしながら、仕事をしている母に代わって家事も行っているとしたら、明らかに姉の立場とは違ってきます。妹が実家にいたからこそ、父親の介護にかかるはずの金銭は節約できたはずですし、妹が家事を行っていたからこそ、母親は仕事に出て家計を維持できたと考えられます。

もし妹が介護や家事をしなかったら、父親の財産は減少したことが考えられます。そこで、父親が亡くなった場合に、父親(被相続人)の財産の維持や増加に貢献した人がいる時には、その人への遺産の分配を多くすることができます。これを専門用語で、「寄与分」といいます。