「有事の金」といいますが、投資対象としての金にはどのような特徴があるのでしょうか。金は、株式や為替とは違った値動きをする投資対象として、昔から独自の存在感を放っています。金そのものの特長を知るとともに、金の投資パターンとそれぞれのメリット・デメリットを把握して、自分に合った投資方法を選択することが重要です。今回は投資対象としての金の特徴と金への投資方法、投資方法ごとのメリット・デメリットについて解説します。

金の投資方法5パターン

金に投資する方法は、主に以下の5種類に分類されます。

・金地金の購入
- 金貨の購入
- 純金積立
- 投資信託
- 金先物取引

これらの投資方法はそれぞれどのような特徴を持つのか、まとめました。

金地金の購入

特徴 金の延べ棒など現物の金を購入・保管
購入場所
購入金額 ・100グラム:約70万円
・300グラム:約2,100万円
コスト ・売買のスプレッド
・購入手数料
・売却手数料
・保管手数料

金地金の購入は、現物の金(金の延べ棒など)を購入して保管する投資方法です。金地金の代表的な購入単位は「5g、10g、20g、50g、100g、200g、300g、500g、1kg」の9種類あります。金地金を手元に保管していると盗難リスクを考慮しなければなりません。そのため最近では購入元に保管を委託するケースが多くなっています。手数料は購入・売却手数料、保管を委託する場合は保管手数料などが必要です。

金地金を購入するメリットは、「手元に現物の金を所持する」という満足感がある点。一方で「初期投資として必要な金額が数十万円必要になる」「盗難リスク対策として保管に手数料がかかる」といった点はデメリットです。

金貨の購入

特徴 ・各国政府の発行する投資用金貨を購入して保管
・カナダのメープル金貨が有名
・金の時価にプラスして鋳造コストが上乗せされた形で購入する
購入場所 地金商、鉱山会社、商社、銀行、百貨店
購入金額 ・1オンス(28.3495グラム):約23万円
・2分の1オンス(14.174グラム):約11万円
※ウィーン金貨ハーモニー、メイプルリーフ金貨
コスト 購入手数料なし

金地金と近い投資方法です。外国政府が投資用として発行している金貨を購入し保管します。有名な金貨は、次のようなものがあります。

・オーストリア政府発行のウィーン金貨
- カナダ政府発行のメープル金貨
- オーストラリア政府発行のカンガルー金貨

金の時価相当額に鋳造コストを上乗せした価格で取引されます。金貨購入は「少額から購入できる」「持ち運びのしやすさ」「鑑賞用としても楽しめる」といったメリットがあります。一方で「鋳造コスト分割高」「傷をつけてしまうと価値が落ちる」「紛失する可能性がある」点が注意点です。

純金積立

特徴 ・毎月一定額を定期的に購入して積み立て
・スポット購入も可
購入場所 貴金属商、商社、証券会社、銀行
購入金額 1,000~3,000円からが一般的
コスト ・購入金額に応じた手数料が必要
・別途口座開設日、年会費、売却手数料が必要な場合も

毎月一定額で少しずつ純金を購入し続ける投資方法です。毎月積み立てるだけでなく自分の好きなタイミングで即時購入(スポット購入)することもできます。投資額分の金は、業者に預ける形となりますが預け方は「特定保管」と「消費寄託」の2種類です。特定保管とは、契約者の金を区別して保管する方法、消費寄託は運営会社が借用して活用する預け方となります。

毎月1,000円程度の少額から誰でも気軽に始められる点が大きな魅力です。一定金額以上積み立てることができれば現物を引き出すことができるところもあります。また一定金額をコツコツと積み立てることで高値つかみのリスクを回避できる点もメリットです。

ただし、消費寄託で預ける場合は、運営会社が破綻すると返還されない可能性があるため、デメリットと言えるでしょう。これは、利用する運営会社を選ぶ際確認すれば回避可能です。

投資信託・金ETF

特徴 ・金関連の投資信託
・純金、金ETF、金鉱株などに投資
購入場所 証券会社、銀行
購入金額 1,000円からが一般的
コスト ・購入時手数料
・信託報酬(保有中の手数料)

金を投資対象とした投資信託や上場投資信託(ETF)、または金鉱関連の株に対して投資する方法です。純金積立と同様に「少額からの購入や積み立てができる」「運用自体はファンドマネージャー(専門家)に任せられる」という点がメリットです。一方で現物の金を引き出せない商品が多く現物の金を所有する満足感が得られない・信託報酬が高めな点はデメリットでしょう。

現物の金にこだわりがない人にとっては、投資信託や金ETFを利用した金投資の方が利用しやすいかもしれません。

金先物取引

特徴 ・将来の期日に決められた量の金を現時点で売買する取引
・種類によっては期限のない先物取引もある
・他と違って金が値下がりすると予想する場合は売りポジションを持てる
購入場所 先物会社
購入金額 金標準先物:1グラム約6,000円
コスト ・取引手数料数百円
・デイトレード手数料は取引手数料の半額が多い

金先物取引とは、将来の期日に決められた量の金を現時点で買ったり売ったりする取引のことです。最長で約1年間の保有となるため、期限を迎えたら決済しなければなりません。金の先物取引は、標準では1,000グラム単位で数十万円単位の資金が必要です。しかし金ミニ取引の場合は、100グラムで約10分の1、数万円という少額の証拠金で取引ができます。

また金先物取引の中でも大阪取引所の貴金属市場に上場されている金限日取引は、金の理論スポット価格が対象の証拠金取引です。ポジションは、自動的に翌営業日に持ち越されるため決済期限がありません。他の取引方法と大きく違う特徴であり将来的に金の価格が下がると考える場合、金を売る取引もできる点はメリットです。

FXと同様にレバレッジをかけて投資ができるため、資金効率が良く短期投資にも向いています。金先物取引のデメリットは、ハイリスクハイリターンであり長期投資としてはあまり向かない点です。長期運用をしたい場合は、他の運用方法を検討したり少額で金限日取引を利用したりすると良いでしょう。

金の3つの特徴

金への投資方法について紹介しましたが投資対象としての金の特徴についても理解しておきましょう。投資対象としての金の特徴は以下の3点です。

・換金性が高い
- 政治・経済の混乱やインフレに強い
- 国際的に米ドル建てで取引されている

それぞれの特徴について説明します。

特徴1:換金性が高い

金そのものに価値があり、換金性が高い点が金の大きな魅力です。例えば貨幣の場合、発行国が破綻すると価値がなくなり、個別株の場合は会社が倒産すると上場廃止になり、同じく価値がなくなります。金にはそのような心配がなく一定の価値で換金できるため、資産を守るのに適しているのです。

特徴2:政治・経済の混乱やインフレに強い

政治や経済の混乱、インフレに強い点も金の魅力です。政治や経済の混乱があると「有事の金」として金に資産をシフトする人が多く人気が出ます。またモノの価値が上がるインフレの状況では、相対的に現金の価値が下がりますが金はモノとして価値が上昇。金を購入することで持っている資産の減少を防ぐことが期待できるのです。

特徴3:国際的に米ドル建てで取引されている

金は、国際的に米ドル建てで取引されています。そのため日本で個人投資家が金の取引をする場合は、米ドル対円の動きも注視しておくことが必要です。米ドル対円が円高に振れる(米ドル円の値下がり)場合、円の価値が高まるのでより多くの金が購入できます。

金の値動きの特徴と投資タイミング

(写真=PIXTA)

金価格の値動きの特徴は、以下のようにまとめられます。

1. 需要と供給のバランス
2. 米ドルの価値
3. 各国の経済動向
4. 各国の金利の状況
5. 原油等の資源価格
6. 地政学リスク
7. 多量に保有する政府・年金基金等の参入

金を購入する場合、投資タイミングとしては、以下が挙げられます。

【金を購入する場合の投資タイミング】
- インフレ傾向にある場合
- 円高米ドル安の局面
- 地政学リスクが高まり米ドル安になる場合

金先物取引で金を「売る」場合は、投資タイミングが逆で、円安ドル高になりそうな場合が金を売るのに適したタイミングです。

金投資を始める際の4つの注意点

(写真=PIXTA)

金投資の方法や金そのものの特徴を把握して投資金投資を始める前に知っておきたい注意点は以下の4点です。

・安定はしているが元本保証ではない
- 金の現物を購入する場合は、盗難リスクや維持コストを把握する
- 利子や配当はない
- 長期運用にするか短期投資かによって投資方法を変える

注意点1:安定はしているが元本保証ではない

金は安全資産と言われていますが、価格の変動は決して小さくなく元本保証もありません。価格変動リスクを分散するためには、純金積立や投資信託など少額でコツコツと積み立てができる投資方法を検討しましょう。

注意点2:金の現物を購入する場合の盗難リスクや維持コストを把握する

金の現物を購入する場合は、どうしても盗難リスクが伴います。ただ盗難リスクを回避しようと業者へ保管を依頼すると、金を所持している間永続的に保管手数料という維持コストがかかるので注意しましょう。

注意点3:利子や配当はない

安全資産と言われる金ですが金自体に金利や配当が付かない点は理解しておきましょう。つまり利益を得るにはインカムゲインではなくキャピタルゲインということになります。また、資産運用の観点から言えば、現物の金を資産に組み入れる場合、全資産の10%程度にしておくのが無難です。

注意点4:長期運用にするか短期投資かによって投資方法を変える

安全資産としての金の特徴を期待して資産の一部に組み入れる場合、長期運用に向いている投資方法を選びましょう。金の価格変動を利用して短期的に収益を得たい場合は、金の先物取引が向いています。純金積立や金ETF、投資信託、金地金の購入は長期運用向きです。

番外編!金投資の税金についても学ぼう

(写真=PIXTA)

金投資における税金は、主に「金の現物を売買する場合」と「金先物取引や投資信託などの金融商品に投資する場合」で扱いが異なります。

現物の金を購入した価格と売却した場合

売却で得たお金の所得種類は譲渡所得です。さらに売却益が出た場合は、他の譲渡所得と合わせて50万円まで特別控除が適用されます。例えば300万円で購入した金が400万円で売却できて100万円の売却益が出た場合、50万円の特別控除が引かれて50万円が所得となり他の所得と合算して所得税がかかる計算です。

また現物の金を購入してから5年を超えている場合は、「長期譲渡所得」となり特別控除50万円を引いた残りの50万円に対し、さらに2分の1の25万円が課税対象となります。つまり5年を超えて長期所有をしていると税制上優遇されることを知っておきましょう。

金の先物取引の場合

現物の金とは違い利益は雑所得となります。FXや株、ETFなど他の先物取引と損益を通算し、給料などの他の所得と分けて税額を計算する「申告分離課税」の対象として税率20.315%で計算された額の税金を納税することが必要です。

金投資の目的を明確にして投資方法の検討を

金の主な投資方法として5パターンを紹介しました。金投資に何を求めるか、投資できる資金量などで投資方法の選択肢は変わってきます。安全資産として自分の資産に金を組み入れる場合は、長期投資向きの純金積立やプロに運用を任せられる投資信託、金ETFから検討すると良いでしょう。金価格の値動きから短期多岐な差益を狙いたい場合は、金先物取引が向いています。

また金に投資するタイミングを把握することで、より効果的な投資が可能です。金を購入する場合、投資タイミングやインフレが発生しそうなタイミング、米ドル安円高になりそうな状況がおすすめです。自分が金投資に求める目的をはっきりさせ自己資金の状況や資産のポートフォリオから金を資産に組み入れる投資方法を決めてください。

※2020年11月13日現在の情報をもとに執筆しています

文・藤森みすず
大手Slerにてシステムエンジニアを経験後、フリーランスのライターに。FX・保険・不動産・フィンテックなど、金融に関する記事を多く手掛ける。

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