視聴者に対して、「アウティング問題について語っている先進的なドラマですよ」とアピールしたいがために登場させた女子社員が、結果として「アウティングの問題を語る女はイタイ」という印象を与えてしまっている。
このドラマでは、ずっとそういうことが起こってるんです。
だから、このドラマは話題を呼ぶんです。
毎回ちょうどいいキーワードが散りばめられていますので、普段から何か世間に言ってやろうと思っている人たちにとっては、うってつけの作品なんです。ホラ、ドラマでも言ってるだろ。今、こういうのが問題なんだよ。
ところがドラマの主張が弱い、古い、薄いがために、その「何か言った人たち」が簡単に反論される環境が生まれている。直接「何か言った人たち」に反論したり、議論したりするのは面倒ですが、このドラマの社会問題の描き方を批判しておけば、間接的に誰かの意見に対して反論したことになって溜飲を下げることができる。
ドラマがそういう世間の不毛な議論のための道具になっている。
マタハラを訴えた女性に対し、オガワ(阿部サダヲ)が「よう杉山ちゃん、チョメチョメしてる?」「3連休だから3チョメだな」「チョメるなら夕方のほうがいいよ、3チョメの夕日つてね」とLINEを送っていたことが発覚したとき、同席している男性が「オガワさんが特別なわけじゃない」「ぼくらひとりひとりの心に居座っている小さなオガワさんを駆逐しなければ」とか言いだします。