■誰にでも、そういうことが起こる。
誰にでも、そういうことが起こる。マエストロにも、響ちゃんにも、マエストロの師匠であるシュナイダー先生にも、そういうことがある。一度失った熱情はしかし、取り戻すことができる。純粋にその好きだった気持ちを思い起こさせてくれる人が、周囲にいれば。
そういうことを、このドラマは言っています。
音楽が好きだった自分を取り戻した響ちゃんは、バイオリンを手に取り、マエストロに語りかけます。
「約束、覚えてる? 一緒に演奏するって」
なぜ響ちゃんがそういう心境に至ったか。それをここに簡潔に書き記すことはできません。このドラマでここまで描かれたすべての瞬間が、こうしてもう一度響ちゃんがバイオリンを手にするためにあったのでした。
マエストロは40年ぶりに調律した自宅のピアノの前に座り、響ちゃんと2人でメンデルスゾーンの「バイオリン協奏曲ホ短調」を演奏します。
音楽は、誰かと演奏することで魔法のような時間が生まれます。別の世界に行ける。生きてるなぁって感じる時間です。
これは第2話でマエストロが、若くして音楽への熱情を失い、自宅でひとりバッハばかり弾いていたチェリストにかけた言葉です。