何の話をしているかというと、太陽くんは事故には遭ったけど軽傷だった、そして雨ちゃんが実際には五感を失ってないと考えると、辻褄がすべて合うんです。味覚がないと言いながら平然と食事をしていることだったり、触覚を失ってちゃんと歩けなくなったのに「触覚って幸せを確かめるためにあるんですね」なんて的外れなことを言ってたりすることに、すべて納得がいく。
すべては「太陽くんの花火」に執着する雨ちゃんという束縛モンスターの仕業だった。病院の屋上で泣きじゃくる太陽くんの背中に貼りついて、高校時代に彼が校内放送で叫んだ言葉をそのまま繰り返す様子なんて過去への執着そのものだし、太陽くんに死神を見せたのも、きっと雨ちゃんによる催眠術の一種でしょう。大人になっていろいろあったのに、いまだに針の飛んだレコードみたいに「あなたの花火を私に見せて」って言い続けてる雨ちゃん、かわいいから気づいてなかったけど、めちゃくちゃ怖いわ。呪いの子だわ。ホント、軽々しく「運命」だなんて言葉を使うもんじゃないね。ここまで憑りつかれるとはね。
なんて、そんな話じゃないことはわかって書いてるわけですが、そうでも考えないとちょっと受け入れ難い価値観の連続で、見てるのがしんどいんです。なんか、これを作ってる人に話が通じる気がしない。この人の考える人間関係って、互いに価値観を押し付け合い、目的を達成するために唆(そそのか)し合い、相手を束縛するために誑(たぶら)かし合うことなんだろうなと感じて、本当に怖くなる。こういう「美しさ」とか「正しさ」の認識の相違が戦争の原因になったりするんだろうな、とそんなことを考えました。
(文=どらまっ子AKIちゃん)