ほんとにね、初めて話した日に運命とか言わないほうがいいなと思うんです。軽々しくそういうことを言うから、こんな呪いにかけられてしまう。

 そう、呪いにかけられたのは太陽くんのほうなんです。

 太陽くんは雨ちゃんにとって、生まれて初めて光をくれた人でした。だから雨ちゃんは、ものすごく執着したんです。しかも、高校時代の、花火職人を夢見る太陽くんに執着した。

 執着したものだから、色覚に障害があって赤色を判別できない太陽くんが花火の仕事を辞めることを、絶対に許さない。文字通り、死んでも許さない。死なせてももらえない。

 太陽くんを支配することができないと悟った雨ちゃんは、自分が弱っていく様を見せることで彼の良心に訴えかけ、彼の心を束縛していきます。味覚を失ったのよ、嗅覚を失ったのよと不憫な雨ちゃんを自己演出しつつ、「あきらめないで」「自分に負けるな」という徹底した精神論トークで圧力をかけていく。