「現役時代の年収が高ければ、老後破産にはならない」。残念ながら、これは真実ではありません。年収が高く、もらえる年金が平均より多くても、生活が苦しくて困ってしまう方はいます。それはいったい何故なのか、高年収だったのに老後破産してしまう人の特徴を3つご紹介します。

特徴1.現役引退後も住宅ローンや教育費の出費が続く

近年は晩婚化が進み、出産の年齢も家を購入する年齢も上がってきています。40歳で子どもが産まれて家を購入した場合、60歳で定年を迎えて無収入になっても、まだ子どもが大学生で住宅ローンも返済中ということも珍しくありません。

高年収の方ほど、住宅や教育にかける金額も大きくなる傾向があります。大きな出費があると、それだけ家計のやりくりが大変になります。

退職金やそれまでの貯蓄でなんなく支払えるなら問題ないのですが、「退職金が思ったより少ない」「貯蓄がうまくいかなかった」などで状況が急激に悪化してしまうことも……。

特徴2.お金の使い方が無計画

収入が多いときは、多少気にせずにお金を使ったり贅沢をしたりしても生活できます。でも、その余裕があるために「なんとかなるだろう」と考えてしまい、家計のことを深く考えないままになっている方もいます。

無駄を省いて支出を最適化したり長期的な資金計画をたてたりすることなく、漫然とお金を使っている場合も老後破産に近づきやすくなります。

「今のところ毎月の収支は黒字」という方でも、役職定年を迎えて収入が下がる、定年して無収入になる、年金が思ったより少ない、思ったよりずっと長生きできた、といったことが重なると、人生の後半でお金が足りなくなってしまうかもしれません。

特徴3.生活コストを下げられない

もう1つ、高年収の方ほど陥りやすいのが「生活水準を下げられない」という問題です。老後を見据えて「このままの支出ではお金が尽きてしまう、なんとかしなくては」という状況になったとき、それまで特にお金について意識せずに裕福な暮らしをしてきた方は、合理的な節約が苦手な場合もあります。

生活水準は上げるのはかんたんですが、下げるのは難しいものです。たとえば数十年にわたって「月50万円使って生活するのが普通」だった人は、年金収入が月30万円の生活に突入したら、そのままでは毎月20万円の赤字が出ます。20万円×12ヵ月×30年(60歳~90歳)=7,200万円です。まずいと思っても、今まで無頓着だったのにいきなり月10万円単位の節約をするとなると、苦痛が伴うかもしれません。

実は、年収が高くても支出が多いために、老後の貯蓄はほとんどできていないという家庭も少なくありません。

老後破産を防ぐには

老後破産を防ぐには、今の生活だけでなく老後の生活まで見据えてお金の使い方を考えることが大切です。老後、理想の生活を送るために必要な金額はいくらなのか、年金や退職金はいくらもらえるのか、いくらくらい足りなさそうなのか、一度時間を取って考えてみましょう。

足りない分の目安額がわかれば、今からいくらずつどうやって貯蓄すればその差を埋められるかも考えやすくなります。

「高年収=老後は安泰」とは限らない

現役時代の年収が高くても、老後破産と無縁ではありません。仕事を引退して収入が激減しても、それまで収入が多かったぶん、それにあわせて支出も多いままになっていて困る方もいます。

ただ、年収が高い方は支出を抑えさえすれば貯蓄に回せるお金を確保できますし、いざとなれば老後も働き続けて充分な収入を得られる方も多いため、年収が低い方より対策しやすいのも特徴です。老後に必要になる金額を考慮して、安心できる資金計画を今から練ってみてはいかがでしょうか。

文・ばばえりFP事務所代表)
関西学院大学商学部卒業後、銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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