渡部のタレントとしての腕を誰よりも信じていたのが佐久間であり、誰よりも引き出したのがみりちゃむだったということだ。再生の魔法がかかった。渡部はいつの間にか、リアクション芸人という新境地の扉の前に立たされていた。
「こっち系、いけますか?」
椅子に座ったまま、ケジャンで顔を汚した渡部が戸惑っている。
「イチからやれよ!」
見下すみりちゃむの口調は乱暴なままだ。
「51になりましたけど……」
悲壮感が顔を覗かせる。
「まだ人生の半分だろ、おまえ」
まだ人生の半分だろ、おまえ。最後の最後に、また天才がパンチラインを放った。
(文=新越谷ノリヲ)