おそらくは、達人たちの方法論はこうだ。

 今の渡部は、気を使う存在になっている。だから、どぎつい本音をぶつけて心の底からのリアクションを取らせること、要するに“剥がす”ことが復帰につながるはずだ。

 だが、それをやるには渡部が巧者すぎた。瞬時に正解を導き出しすぎたのだと思う。渡部は渡部で剥がされに来ている。セッションが成立してしまう。達人同士のアドリブ合戦は、時に予定調和に見えてしまう。慣れ合いに見えてしまう。ドキュメンタリーにならない。東野もさまぁ~ずも千鳥も、当然、自分が悪者になりたくはない。言い過ぎて悪者に見えてしまえば、望んでいた笑いも起こらない。

 今回の「NOBROCK TV」の企画で感じたのは、フィクションというものの強さだった。

 当たり前だが、みりちゃむは本気で渡部に「醤油飲め」と思っている女性ではない。罵倒キャラはあくまでキャラであり、天才的な即興芝居の能力とイヤモニを通して伝えられる佐久間からの指示によって動いているだけだ。佐久間が今回やったことは、渡部の本性を剥がすことではなく、フィクションの世界に巻き込む作業だった。バラエティというものに、タレントのままの渡部を迎え入れる作業だった。