TKOの木下隆行よりも、元・雨上がり決死隊の宮迫博之よりも、今現在の芸能界でもっとも“許されていないタレント”といえば、アンジャッシュの渡部建だろう。

 かつての渡部は、芸能界の何もかもを手中に収めていた。数々の大番組でMCを張り、FMラジオで小粋なDJもサラリとこなした。グルメと夜景と高校野球を語らせたら右に出る者はなく、本業のお笑いでも「すれ違いコント」というジャンルを生み出した。最強美人女優を妻とし、ナショナルクライアントのCMを数多く獲得、大金を手にした。純白のメルセデス、プール付きのマンション、そんなものは欲しがりさえすれば、何だって手に入った。

 もちろん渡部は、それらをたやすく享受していたわけではない。徹底したセルフブランディングと、地道な情報収集と、自覚的かどうかはさておき「芸人としてのプライドを捨てる」という作業もあったに違いない。

 そうして渡部は自ら切望した頂きに立ち、そして、壊れた。