2020年6月を境に、渡部は地を這っている。その原因については割愛するが、50歳を前に、まあとにかくひどいことになった。マスコミからの袋叩きは苛烈を極めた。誰もが羨む人生が叩き潰されていく様に、視聴者はしこたま酔った。その暴力が飽きられると、渡部建というタレントはもともと存在していなかったものとされ、芸能界は平然と回り始めた。
やがて、かつての仲間たちが慎重に手を差し伸べ始める。ローカルレギュラーの『白黒アンジャッシュ』(千葉テレビ)、東野幸治やさまぁ~ずのYouTubeチャンネル、千鳥の『チャンスの時間』(AbemaTV)、誰もが笑顔で渡部と接し、それぞれの方法論で渡部の復帰への道筋を模索した。渡部もそれに懸命に応えたが、やはりどこか持て余しているように見えた。
やはりあのことは許せない、叩かれ過ぎて同情が拭えない、そもそもあんまり芸風が好きじゃない、そんな空気がない交ぜになって、渡部にまとわりついていた。今年4月にYouTubeで「渡部×ロケハン」が始まり、本格的に地上波復帰を目指すことを宣言しても、もはや全肯定することも全否定することもはばかられる現在の渡部建というタレントに、席は見当たらなかった。
もしかしたら一生、もう渡部のキャリアは──。世の中には本当に「取り返しのつかないこと」があるのかもしれないと、誰もが思い始めていた。
18日、風穴が開いた気がした。
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