「経費の値上がりなどを考えると、アリーナクラスの一般的な席で少なくとも1万5000円、できれば2万円くらいまで引き上げないと厳しい。アーティストやスタッフの収入面だけでなく、ライブにお金をかけられなくなると、日本のエンタメのクオリティが下がっていくでしょう。ライブツアーの準備には半年以上かかりますが、それに見合う報酬がなければモチベーションも下がる。これは個人的な感覚ですが、すでに日本のアーティストは世界と比べて全体的にレベルが下がってきているように思えます。アーティストが稼げなくなったら、音楽業界を目指す人も減っていくでしょうし、優秀なアーティストやスタッフは日本に見切りをつけ、海外に流出してしまうかもしれません。このまま変わらずにいたら、あと10年もすれば日本のエンタメ業界は世界と比べて衰退が顕著になるでしょう」
業界内で値上げは必須という認識がありながら、チケット代をあまり上げられずにいる要因は何なのだろうか。
「アーティストも制作側も、チケットの値上げをしたいというのが、多くの人の本音でしょう。しかし、もし2万円、3万円と上げていったら、お客さんが買ってくれないのではないか、不満が出るのではないか、学生などのお金のない人を切り捨てることになるのではないかという意識があり、どこも踏み切れずにいます。チケット代の値上げをしたアーティストに対して、一部のファンから『お金のない人はライブに来るなってことなんですか?』といった批判の声が集まってしまう現状があり、そうした反応への危惧もネックになっていると考えられます」
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