さらに、ライブ関係者からは切実な声が上がっており、このままでは日本のエンタメの衰退につながるとまで危惧されているようだ。なぜ日本はチケット代を上げることができないのか、どれくらい価格を上げる必要に迫られているのか、大手プロダクションのライブ制作担当者に本音を聞いた。

「ここ30年ほどの話でいうと、ライブはCDを売るためのプロモーションという要素が非常に強かったんです。チケットを手頃な価格にして、より多くの人にライブを見ていただき、ライブがよければCDやグッズを買ってもらえるし、ライブチケットを優先的に買いたいという需要でファンクラブにも入ってくれる。ライブで利益を出さなくてもアーティストや事務所は潤っていましたから、チケットを大きく値上げする必要がなく、価格に比べてサービス過剰ともいえるクオリティのステージを提供できました。しかし、今はCDが売れなくなって音楽はサブスクなどの配信が主流になり、アーティストは印税だけでは十分な利益を得られなくなった。それは事務所も同じですから、ライブ自体を収益化していかないと業界的にやっていけないところまできています」

 最近はあらゆるものが値上がりしているが、それはライブ業界にも深刻な影響を与えている。

「ライブにかかわるすべての経費が値上がりしています。たとえば、ドームツアーならスタッフが400~500人ということも珍しくありませんが、最近はホテル代が高騰しているので宿泊費だけで大きな負担になります。会場の利用料も上昇傾向にありますし、電気代なども上がっている。細かいところでいえば、機材などを運ぶトラックのガソリン代や移動のタクシー代、ケータリングやお弁当の価格も上がっています。それなのにチケット代だけがほとんど上がらないため、ライブ事業がどんどん苦しくなっているんです」