在京キー局アナと地方局アナの違い

 企業が苦手とする「伝える・見せる」能力を身につけていて、才色兼備な人物が多く、清廉潔白なイメージを持つ元女性アナが、社外取締役というポジションにうまくマッチしているようだ。

 一方で、「現状、社外取締役に就任している方々は、いわば“女性アナピラミッド”の頂点にいるような人たちです。同じアナウンサーとはいえ、地方局出身者とキー局で知名度や人気も高かった方々とでは、いろいろな点で違いがあります」と樋田氏。

 在京キー局と地方局のアナウンサーの大きな違いの一つが、仕事への関わり方だという。分業制が徹底している在京キー局では、アナウンサーは用意された原稿を読むため、伝えることに専念できるが、地方局では企画を考えるところから始まるケースが多い。企画書を書き、取材先にアポイントを取り、カメラマンらと取材に臨む。原稿も自分で書く上、取材した映像を自ら編集するケースもあるという。

「地方局の番組制作は少数精鋭なので、アナウンサーはディレクターや記者の仕事も兼務しているのが実情です。そのため、伝えるスキルは高くなりますが[鈴木1] 、30歳を過ぎると他部署に異動になったり、結婚を機にアナウンサーを引退したりするケースが多いのも現実です」(同)

 退社後、フリーランスの道を選んだとしても、仕事を勝ち取るのは難しい。たとえば、リポーターのオーディションでは、アナウンサーだけでなくタレントやモデルなどの人たちとも、限られた席を奪い合うことになる。

「私自身も、フリーランス転身後にオーディションに参加しては落ちるという苦しい時期を過ごしました。そして、伝える仕事だけで生きていけるのはごく一部だと気づき、それでも伝える仕事をライフワークにしたいと思い、元アナウンサーのセカンドキャリアを広げようと思い、起業しました」(同)