社会の最下層の重圧に押し潰され、ソヒは大好きだったダンスさえ踊れなくなってしまう。ソヒの同級生たちも、それぞれ実習先でもがき苦しみ、ソヒの異変に気づくことができなかった。孤独に亡くなったソヒのために、ぺ・ドゥナ演じる刑事のユジンが不条理な社会に怒り、涙を流すことになる。
是枝裕和監督の『空気人形』(09)や『ベイビー・ブローカー』(22)にも出演した韓国の人気俳優ぺ・ドゥナが、チョン・ジュリ監督の『私の少女』に続いて、警官役を演じている。ぺ・ドゥナ演じるユジンは、チョン・ジュリ監督が創作したキャラクターだ。
ジュリ「『私の少女』でぺ・ドゥナさんが演じた警官はヨンナムという名前でしたが、今回はユジンという役名です。名前が違うので別人ではありますが、どちらも警察大学を卒業し、男性社会である警察組織でずっと仕事をしてきた女性です。『私の少女』と『あしたの少女』は異なる世界の物語ですが、両作をご覧になった方はとてもよく似たキャラクターがいると思っていただいてかまいません」
ペ・ドゥナ演じるユジンが責任逃れする企業側や教師たちを糾弾することで、本作を観ている我々はひとまず溜飲を下げることができる。だが、若手女優キム・シウンにとっては、今回のソヒはかなりのハードな役だったに違いない。
ジュリ「ひとりで追い詰められていく役だったので、キム・シウンさんは大変だったと思います。『私の少女』に出てくれたキム・セロンさんも継父から虐待される役で大変だったのですが、新人監督だった私は何もケアできなかったんです。それもあって、今回はシウンさんをケアしなくてはと思っていたんですが、大したことはできませんでした。私にできたことは『演技をしている間はソヒだけど、それ以外の時間はキム・シウンに戻ってください』と話したことぐらいです。監督が掛ける言葉としては平凡すぎるものですが、シウンさんは『あの言葉を掛けてもらえたことで、撮影を乗り切ることができました』と言ってくれたんです。彼女の言葉に、私も救われたように思います」