誓約書にサインすれば手当を与えるという狡猾さ
劇中、上司となるセンター長は実習生であるソヒを気遣うが、ソヒよりも先に彼のほうが自死を遂げてしまう。コールセンターで働くスタッフは、センター長の葬儀に参列することが許されず、また自殺騒ぎを口外しないという誓約書へのサインを求められる。同調圧力が働き、スタッフは次々とサインしていく。
ジュリ「そうしたエピソードも、実際に起きた事件をベースにしています。問題があった企業はトラブルが起きるたびに、誓約書にサインすれば特別手当を支給することをちらつかせていたんです。すべて、お金で解決しようとしていました。実際の事件とは異なる部分もあります。センター長とソヒは同時期に働いていたことにしましたが、実際のセンター長はソヒのモデルになったホン・スヨンさんが働き始める前に亡くなっていました。また、センター長の遺族は企業側からの示談金を拒み、労働災害であると訴え、最後まで闘い続けました。でも、同じような事件で、生活苦から示談金を受け取った遺族がいたことも事実なんです。同時期に起きていた同じような事件も参考にして映画化しています」
韓国の職業高校では、3年生になると現場実習として実社会で働くことが教科となっており、生徒の専攻分野や適性と関係ない職場で働かされているケースも少なくないようだ。また、実習生は労働基準法などの対象にはなっておらず、企業側はそうした法の死角を悪用していたことになる。
ジュリ「韓国社会で働く労働者たちは、明確な序列の中に組み込まれています。いちばん上は大企業の正社員です。続いて、非正規社員、契約社員、派遣社員といったヒエラルキーになっているんです。さらにその下になるのが、実習生です。ソヒは社会の最下層で苦しんでいたわけです」
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