清水崇の投影(?)のマキタスポーツがポンコツかわいい
もうひとつ重要なのは、実質的な主役が「GENERATIONSのことをまるで知らない探偵のおじさん」であること。彼はガサツな性格で、メンバーそれぞれに話を聞くも、失礼にも名前を盛大に間違えたりして、他キャラクターから諌められることも多い。ともするとイライラばかりを抱いてしまいそうなところだが、不思議と感情移入してしまうのは、演じたマキタスポーツの愛嬌のおかげではないか。
マキタスポーツは口コミで話題を集めた2022年公開の映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』でも無能なのに憎めない上司を演じていたが、今回の『ミンナのウタ』でも“ポンコツかわいい”印象がある。愛する娘への言動もいじらしいし、時にはしっかりとした推理と行動することも、それまでのギャップもあってかカッコよく見えてくる。このマキタスポーツを主人公とした映画をシリーズ化してほしいくらいだ。
おそらく、このマキタスポーツには、少なからず清水崇監督本人の姿が投影されていると思う。何しろ、清水崇監督は企画を聞いた時に「GENERATIONSの10周年記念映画が俺のホラーでいいの?」と思ったものの、それでもせっかくのオリジナル作品であることを踏まえ、「初対面のGENERATIONSのメンバーそれぞれに挨拶を交わしつつ、関係性や各人のキャラクターをどう生かせるか?」を探って行ったらしい。
初めこそ失礼ではないかという想いを抱えつつ、GENERATIONSのメンバーに話を聞いてホラー映画化へ取り組んだ清水崇監督の姿は、『ミンナのウタ』の劇中で彼らに不可解な出来事を聞いていく探偵役のマキタスポーツの姿の姿と重なっているというわけだ(もちろん実際の清水崇監督はメンバーの名前を間違えたりはせず、それぞれに真摯に話を聞いていただろう)。