限定額適用認定証の活用が便利

高額療養費制度により限度額超過分が後日払い戻されるとはいっても、一度に多額の支払いをするのは大変であろう。そこでおすすめしたいのが、「限度額適用認定証」の利用である。患者が70歳未満である場合、保険証と限度額認定証を提示することにより、窓口における医療費の支払いを自己負担限度額までに抑えられるのだ。

限度額認定証の交付を受けるには事前の申請が必要になるため、入院や手術が決まり医療費が高額になりそうな場合は、手続きをしておくことをおすすめする。

自己負担額をシミュレーション

医療保険の主契約について決める際は、入院した場合の自己負担額について詳しくシミュレーションしてみることをおすすめする。

年収700万円の40代男性が、悪性新生物の治療のため30日入院し、100万円の医療費がかかったと仮定する。この場合、医療費の自己負担額は8万1,000円+(100万円−26万7,000円)×1%で、8万8,330円になる。これに1日あたりの差額ベッド代2,407~7,797円と食事代1,380円をプラスすると、今回の入院では1日につき6,731円~1万2,121円の自己負担額が発生することになる(差額ベッド代については『主な選定療養に係る報告状況』(厚生労働省)の2017年7月時点のデータを、食事代については2018年4月時点の入院時食事療費をもとに計算)。

一方、これが㈼住民税非課税世帯の70歳男性であった場合、医療費の自己負担額は2万4,600円であるため、差額ベッド代と食事代をプラスしても、1日あたりの自己負担額は4,607~9,997円となる。

こうして具体的に計算してみると、医療保険の入院保障日額をいくらにすればいいのか、何歳を境にその保障額を見直せばいいのか、といった点が具体的に見えてくるのではないだろうか。

傷病手当金制度により逸失収入をカバー

病気やケガにより入院すると仕事を休まなければならず、その間、収入を得られない場合がある。実際、生命保険文化センターが入院経験者を対象に直近入院時の逸失収入の有無について調査したところ、21.8%の人が「逸失収入があった」と回答しているのだ(『平成28年度 生活保障に関する調査』より)。

公的医療保険制度や高額療養費制度を活用することで治療費の自己負担額については抑えることができるものの、入院・療養中の逸失収入について不安を抱える人は少なくない。

そこで知っておきたいのが、「傷病手当金制度」である。これは、病気やケガで会社を休んだ場合に本人とその家族の生活を保障するためのもので、以下の条件を全て満たす場合に手当金が支給される。

  • 業務外の病気やケガの療養であること
  • 病気やケガの療養のために、仕事を休んでいること
  • 療養のため、4日以上にわたり仕事を休んでいること
  • 仕事を休んでいる間、給与の支払いを受けていないこと

傷病手当金により保障されるのは標準月額報酬の約2/3

支給される傷病手当金は、「支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3」により算出される。傷病手当金制度には3日間の待機期間(仕事を休み始めた日より連続した3日間)があるが、概ねこの制度を利用することで給与の2/3の支給を受けられると考えて差し支えないだろう。

傷病手当金の有無によって対策を変える

傷病手当金は、支給開始日より最長1年6か月間にわたり受け取ることができる。また一定の要件を満たす場合は、退職後も傷病手当金の申請が認められる。

給与所得者が医療保険の保障内容について検討する場合は、療養により仕事を休んだとしても給与の2/3程度の保障は受けられることを念頭に置いておくといいだろう。一方、自営業者については、療養のため休業しても傷病手当金の支給を受けることができない。そのため医療保険の入院給付日額をやや高めに設定したり、医療保険とは別に所得補償保険に加入したり、といった対策が必要になる。