──バドミントンのお姉さんも、自転車屋のおじさんも、そしてランさんも、そのヘル(地獄)に住んでいるわけですもんね。
イ・ラン:はい。時に自分の考え方も疑いながら、いま一緒にこの社会に生きている人と会話がしたい気持ちです。いろんな人の存在を無視せずに、自分も人から無視されない方法がないか、いまは探している途中なんです。
いまの私が一番“強い”と思うのが、「サイダー」じゃなくて変幻自在な「スライム」のイメージなんですよね。形を変え続けることが前提の生き方というか。「ヘル朝鮮」と言っていた私もいたけど、そのあと自分の考え方を疑って、見つめ直して、変わっていった。自分が常に「スライム」な状態であることを隠さずに生きたいと思うし、ほかの人にもそうあってほしいと願う。
話を戻すと、例えば「結婚する予定は?」と聞いてきたお姉さんが、結婚する予定のないパートナーと毎週バドミントンする私に会って話したことで、そういう生き方もあるというデータが脳みそに入ります。そういう経験によって、ほかの人に「結婚する予定は?」と聞かなくなるかもしれない。そうやってお姉さんも、私も、変わり続ければいいんじゃないかなと。
──今回のお話、すごく複雑に込み入っていて難しいけど、だからこそ伝わるものがあるなと感じました。
イ・ラン:「スライム」みたいな内容だから、記事にするのも大変そうですね(笑)。でも、複雑なままじゃないと伝わらないこともあるから。特にウェブニュースでは「サイダー記事」が世の中に求められがちだけど、このインタビュー連載は「スライム」な感じにしてくれるとうれしいです。