──マイノリティが差別されて危険な目に遭うことも多い現状があるからこそ、「一般」「二般」で世界を分けなければならないところがある。そこを踏まえると同時に、そのように割り切った世界ではなく、不特定多数によって形成される社会に生きているのだ、という意識も強く持ちたいということでしょうか。

イ・ラン:そうですね。昔、韓国のヘル(地獄)なところを紹介する『ヘル朝鮮ガイドブック』を作ろうとしていたんですけれど、やめたんですよ。仲間同士で「この社会は地獄だ~」って共感して、盛り上がっていたのは楽しかったけど、それだけだと何も変わらないと思ったんです。

 韓国の表現で「サイダー(사이다)」っていうのがあって。飲み心地が爽やかなサイダーのような感じで、極端にはっきりと物事を捉えたり、そのことをうまく表現してスカッとできるようなことを「サイダー」というんですね。「サイダー発言」とか「サイダー表現」と言ったりするんですけど。いま考えると、「この社会はヘル(地獄)だ」と言うのも、ある意味「サイダー」だったのかも。