インド政府は人民元での決済は「あくまで一部の支払い」だと認識しているようだが、民間での現場では額はまだ少ないものの着実に広がっている。中国当局は石油取引での人民元の決済を世界に促しており、インドでの人民元での決済は中国当局の取り組みを後押しする形となっている。
バングラデシュでは、ロシアの国営原子力会社ロスアトムが原子力発電所を建設しているが、建設費用などを人民元で支払うことでバングラデシュとロシアが合意したという。ブルームバーグやワシントン・ポストなどが報じた。米ドルでの支払いができないバングラデシュにロシアは、ルーブルでの支払いを求め、1年ほど交渉が難航していたが、中国がバングラデシュの一部の銀行に中国との取引の決済を人民元で行えるように許可したことから、4月にバングラデシュとロシアが人民元での決済に合意した。
3月にモスクワで開かれたロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席との会談では、国際経済における人民元の役割についても議題になった。プーチン大統領は「ロシアは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々とロシアの間の支払いに中国人民元が使われることを支援する」と話し、人民元を世界の基軸通貨にしようとする中国の政策を支持した。米国の経済制裁を逆手にとったロシアと中国の試みは、この会談で弾みがついたともいわれている。ロシアへの経済制裁は人民元を利するだけだ、という声は米国政府内にも根強い。