■妊娠には「勢い」も必要なんだと知った

「この人のDNAを残したい」。妊娠を真剣に考え始めたのは、そんな本能が疼いたことがきっかけでした。可能性があるならいつか出産したいと思っていた私に、「この人の子どもが産みたい」と思えるパートナーとの出会いがあり、今お腹の中に赤ちゃんがいます。

冷静になって振り返ってみると、今の状態でよく妊娠する決意をしたなとか、自分の会社と店舗を経営しながら、いつ来るかわからない妊娠に踏み切ったなとか、いろいろなことを思います。

「自分は妊娠できる身体なのか?」それはチャレンジしてみないと誰にもわかりません。そして、妊娠したらどの程度のつわりがあるのか、どれだけ働ける状態なのかは、妊娠してみないとまったくわかりません。妊娠はやってみないとわからない、未知のリスクに溢れています。

そして、私のやっているお店という商売は、ただ存在するだけで、毎月湯水のようにお金が流れ出ていく恐ろしい装置で、稼ぎ続けることが必須です。

実際に私の場合、妊娠発覚直後から始まったつわりの時期は、吐き気と頭痛とめまいに来る日も来る日も苦しみ、動くことも考えることもできない無労働の期間が3カ月間もありました。これは予想外でした。妊娠する前に、つわりがこんなに大変だって、私に教えてくれた人は誰もいなかったからです(笑)。それでも毎日お店は動いているので、つわり時期の3カ月間のロスが、つわりが終わって復帰した後の売上にもかなり影響しました。

そんな恐ろしい装置を抱えている経営者の自分が、妊娠前に冷静になって「今妊娠しても大丈夫か?」を考えていたら、そしてつわりの容赦のなさを知っていたら、絶対に妊娠に踏み切れる日は来なかったと思います。

これは、起業したてのときの心境と似ています。起業も勢いがないとできません。起業して10年になりますが、起業を決意した28歳のときは、数年サラリーマンとして働いた経験があるくらいで、ビジネスとか経営とか人を雇うとか税務とか、世の中のことなんて全然わかっていませんでした。

しかも、最初の事業はベビーシッターの派遣と教育事業、今やっているのはエステサロン。どちらもスタート時は、資格も経験もありませんでした。私にあったのは、「これが世の中に必要だと思うからやりたい」、この熱意と度胸だけ。

事業計画とか市場リサーチとか、ゆっくりじっくり考えても答えはわからない。それより、やってみたら正しいかどうかわかる。行動してから考える。行動しながら考える。これが私のスタイルです。

周りからは、「保育士の資格あるんですか?」とか「美容学校に行って学んだんですか?」とかいろいろ聞かれましたが、妊娠したときに、「結婚してるんですか?」と聞かれたのと似ているなと今は思います。

「現実を作ってしまえば、どうにかなるもの」そして「勢いがなくちゃ絶対にできないもの」。これが起業と妊娠のふたつの経験を通して実感していることです。