円安の時にドルを買うのはありです。このままさらに円安・米ドル高が進めば利益を得られるでしょう。
米ドルを買う方法は、主に外貨預金やFXが考えられます。
目次
円安の時にドルを買うのはあり?なし?
円安の時にドルを買うのはありです。
なぜなら円安ドル高が進むと手持ちの米ドルの価値が高まり、その分利益が発生するからです。
単純な例ですが、「1米ドル=100円で米ドルを購入、その後1米ドル=120円になった場合」は、20円(120円-100円)の利益を得られます。
ただし、逆に円高に進むと損をする可能性もあります。これは1米ドル=80円になった場合は、元々100円の価値があった米ドルが80円分の価値しかなくなるためです。
では今後、円安に進む可能性はあるのでしょうか?為替の動きは完全に予測することはできませんが、さらに進む可能性はゼロではありません。
例えば米ドル円は2023年5月末で1米ドル=約140円ですが、これを見ると多くの人は「円安だ」と感じるでしょう。しかし、1980年代までさかのぼると1米ドル=250円台で推移していた時代もありました。
1米ドル=250円は、現在の感覚で見るとかなりの円安です。しかし、かつてこのレートだったことを考えると、これからもまだ進む余地はありそうです。
今後さらに円安が進むなら、今のうちに米ドルを買っておけば利益が期待できます。
つまりさらなる円安を予想するなら米ドルを買っておくことは合理的な選択肢だといえるでしょう。
米ドルを買う方法は主に次の2つ
>外貨預金で米ドルを買う
>FXで米ドルを買う
円安の時にドルを買う方法
ドルを買う方法は「外貨預金」と「FX」の2つが代表的です。
円安が進むと、どちらの方法でも利益を得られるでしょう。
・円安の時に外貨預金でドルを買うとどうなる?
・円安の時にFXでドルを買うとどうなる?
外貨預金で米ドルを買う
外貨預金とは、円をいったん外貨に交換して預金を行う仕組みです。米ドルに交換して預金をすれば、「米ドルを買う」行為と言えます。
2023年時点で、アメリカは日本より金利が高いため、円預金よりも高金利の運用が期待できるでしょう。
【日本とアメリカの金利】
・日本:-0.1%
・アメリカ:5.25~5.50%
※2023年7月27日時点
※日本は日本銀行当座預金の超過準備預金の金利(短期)
※アメリカはフェデラルファンド(FF)金利
出典:マネックス証券 各国政策金利
外貨預金は銀行などの金融機関で提供されています。
■外貨預金での収益源は?
外貨預金で米ドルを買う場合の収益源は、為替差益と利子収入の2つです。
為替差益とは円安による元本の値上がりのことで、利子収入とは外貨預金の金利で計算される利子のことを指します。
為替差益……円安による元本の値上がりのこと
利子収入……外貨預金の金利で計算される利子のこと
なお外貨預金にも、普通預金と定期預金があります。以下の表で示すように、一般的に定期預金のほうが高金利です。また定期預金のなかでも、原則預入期間が長いほど金利は高くなります。
金融機関名 | 普通預金 | 定期預金 (6ヵ月物) |
定期預金 (1年物) |
---|---|---|---|
住信SBIネット銀行 | 0.50% | 5.10% | 5.10% |
ソニー銀行 | 0.70% | 5.00% | 5.00% |
楽天銀行 | 0.01% | 1.01% | 1.21% |
円安の時に外貨預金でドルを買うとどうなる?
外貨預金でドルを買った場合、円安が進むと利益を得られます。
具体的な条件でシミュレーションしてみましょう。
1米ドル=140円のときに、金利3%の米ドル預金へ1万米ドル分を預け入れるケースで考えます。
当初の元本は140万円(140円×1万米ドル)、利子は1年間に300米ドルを受け取れる条件です。(手数料や税金は考慮しない)
1米ドル=160円まで円安が進んだ場合は、為替差益が発生します。米ドル/円が140円から160円へと20円分上昇したので、為替差益は20万円(20円×1万米ドル)です。
さらに利子収入も、4万8,000円(160円×300米ドル)と6,000円増加します。合計で24万8,000円の利益となりました。
円安が進めば……
・為替差益 20万円
・利子収入 4万8,000円
合計:24万8,000円の利益
このように、円安が進むことにより外貨預金では為替差益と利子収入の両方で利益を得られるのです。
なお、「為替が変動しない場合」と「円高の時」には、外貨預金にどういう影響があるのかも確認しておきましょう。
▼変動なし
為替が全く変動しなくても、利子収入を受け取れます。年間300米ドルの利子は、1米ドル=140円で4万2,000円(300米ドル×140円)となり、これが利益です。
▼円高の時
円高が進むと、為替差損が生じます。仮に米ドル円が1米ドル=120円まで下落すると、為替差損は20万円(-20円×1万米ドル)です。また利子収入も円高によって3万6,000円(120円×300米ドル)と6,000円分減少し、トータルで16万4,000円の損失です。
以下に、為替レートの変動によりどのくらいの利益または損失が出るのかをまとめました。円安が進めば進むほど、利益をより多く得られることがわかります。
為替レート | 為替差益 | 利子収入 (300米ドル) |
合計 |
---|---|---|---|
1米ドル=180円 | +40万円 (40円×1万米ドル) |
+5万4,000円 (180円×300米ドル) |
+45万4,000円 |
1米ドル=160円 | +20万円 (20円×1万米ドル) |
+4万8,000円 (160円×300米ドル) |
+24万8,000円 |
1米ドル=140円 | ±0円 (0円×1万米ドル) |
+4万2,000円 (140円×300米ドル) |
+4万2,000円 |
1米ドル=120円 | -20万円 (-20円×1万米ドル) |
+3万6,000円 (120円×300米ドル) |
-16万4,000円 |
1米ドル=100円 | -40万円 (-40円×1万米ドル) |
+3万円 (100円×300米ドル) |
-37万円 |
FXで米ドルを買う
FXで、「米ドル/円」の買いを行うと、米ドルを買うことと同様の効果が得られます。
FX(Foreign Exchange:外国為替の略)とは、ある国の通貨を他の国の通貨と交換する取引のことです。「通貨ペア」と呼ばれる2ヵ国の通貨の売買をします。
FXでは片方の通貨だけを売買するのではなく、必ずペアで売買をするのが特徴です。例えば「米ドル/ユーロ」の場合、米ドルを売るならユーロを買い、ユーロを売るなら米ドルを買うというような仕組みです。
また通貨ペアでは、表記の「左側にある通貨を買い/右側にある通貨を売る」というルールがあります。売買に関する表現も特徴的で、「米ドル/円を買う」と言った場合は、「米ドルを買い、円を売る」ことを指します。
実際にFXで米ドルを買うということは、米ドルが表記の左側にある通貨ペアの“買い”を行うということです(これをロングとも呼びます)。
円安に期待して米ドルを買うなら、「米ドル/円」の買いを選びましょう。
この場合、米ドルの価値が高まれば(円安)利益になり、価値が下がれば(円高)損失になります。
なおFXでは“売り”(ショートとも呼ぶ)もできますが、真逆の動きとなるので注意してください。
米ドル | 日本円 | |
---|---|---|
米ドル/円の買い(ロング) | 買い | 売り |
米ドル/円の売り(ショート) | 売り | 買い |
FXは証券会社やFX専門業者などで提供されています。
■FXでの収益源は?
FXでは、次の2つで利益を得ます。
・為替レートの差(スポット益)
・金利の差(スワップポイント)
【為替レートの差(スポット益)】
スポット益は為替レートの変動によって得られる利益のことです。
「米ドル/円」の買いを実施した場合、円安が起これば利益が、反対に円高となれば損失となります。
例えば1米ドル=140円のときに1万米ドル分(140万円分)の買いを行った場合、1円分の円安で1万円分(1円×1万米ドル)の利益が生じます。
「米ドル/円」を1米ドル=140円で1万米ドル分の買いを行った場合のスポット益
・1ドル=160円:+20万円
・1ドル=140円:±0
・1ドル=120円:-20万円
【金利の差(スワップポイント)】
FXでも利子収入に相当する収益があり、一般的に「スワップポイント」と呼ばれます。
日米で金利を比較すると、歴史的に米国のほうが高く日本のほうが低い状況が続いています。
10年国債利回りを1986年から比べると、1990年に差が縮小したことはありましたが、一貫してアメリカのほうが高いことがわかります。
この状況であれば、米ドル/円の買いを行うとスワップポイントを受け取ることができるでしょう。反対に売りを仕掛けるとスワップポイントがマイナスになることが想定されます。
買い(ロング) | 売り(ショート) | |
---|---|---|
FXネオ (GMOクリック証券) |
216円 | -219円 |
みんなのFX (トレイダーズ証券) |
220円 | -220円 |
SBI FXトレード | 209円 | -216円 |
円安の時にFXでドルを買うとどうなる?
円安が進めばスポット益が発生し、利益を得られます。
具体的な条件でシミュレーションしてみましょう。
1米ドル=140円のときに米ドル/円の1万米ドル分の買いを行い、1年間維持するケースを考えます。スワップポイントは、実際には毎日変動しますが、1日200円で固定されるものとして計算します(手数料は考慮外)。
1米ドル=160円まで円安が進めば、スポット益は20万円(20円×1万米ドル)です。スワップポイントは1日あたり200円を365日受け取れるため、1年間で7万3,000円となります。
なおスワップポイントは通貨ペア間の金利差で計算されるため、為替の変動は直接的には影響しません。
円安が進めば……
・スポット益 20万円
・スワップポイント 7万3,000円
合計:27万3,000円の利益
なお、「為替が変動しない場合」と「円高の時」では、FXにどういう影響があるのかも確認しておきましょう。
▼変動なし
為替の変動がない場合、利益はスワップポイントのみです。1日あたり200円を365日受け取れるため、1年間のスワップポイントは7万3,000円です。
▼円高の時
1米ドル=120円まで円高が進んだ場合のスポット損は20万円(-20円×1万米ドル)です。7万3,000円のスワップポイントを受け取ってもトータルで12万7,000円のマイナスとなります。
いずれもスワップポイントに変動はありませんが、スポット益は円安が進めばプラスになることがわかります。
為替レート | スポット益 | スワップポイント (1日200円) |
合計 |
---|---|---|---|
1米ドル=180円 | +40万円 (40円×1万米ドル) |
+7万3,000円 | +47万3,000円 |
1米ドル=160円 | +20万円 (20円×1万米ドル) |
+7万3,000円 | +27万3,000円 |
1米ドル=140円 | ±0円 (0円×1万米ドル) |
+7万3,000円 | +7万3,000円 |
1米ドル=120円 | -20万円 (-20円×1万米ドル) |
+7万3,000円 | -12万7,000円 |
1米ドル=100円 | -40万円 (-40円×1万米ドル) |
+7万3,000円 | -32万7,000円 |
円安の時に、米ドルを買う上で気をつけるべきこと
外貨預金やFXを通じて米ドルへ投資する場合、注意したいポイントもあります。
ドルを買う際の注意点1.すべての資産を米ドルに換えない
資産の全額で米ドルを買うことはおすすめしません。なぜなら、多くの場合リスクの取り過ぎとなり、許容できないほどの損失が発生することが懸念されるからです。
為替相場は、さまざまな要因で変動しているので常に円安となるわけではありません。
例えば、2022年に日本が3回に分けて約9兆1,880億円もの為替介入を実施したとき、米ドル円は強く円高方向へ進みました。米ドルを買っていた人の多くは損益が悪化したでしょう。
このように、米ドルへの投資は基本的に元本保証ではありません。米ドルが円に対して値下がりする(円高となる)ことは、当然に起こり得るのです。
そのため、資産の全額で米ドルを買うことは資産のすべてをリスクにさらすことと同義であり、ほとんどの人にとって過度なリスクテイクとなるでしょう。
ドルを買う際の注意点2.コストに注意する
米ドルを買う場合は、基本的にコストが発生する点にも注意しましょう。外貨預金なら為替手数料(為替コスト)、FXはスプレッドが主なコストです。
外貨預金の為替手数料(為替コスト)は、片道分だけ表示されることが多く、この場合は預け入れと引き出しそれぞれで発生します。
例えば「1米ドル=25銭(0.25円)」と表示がある場合、往復では0.5銭(0.5円)のコストがかかります。1万米ドル分を買う場合、往復の手数料は5,000円です。
一方、FXのスプレッドは買値から売値を差し引いた額のことであり、往復分のコストとなります。
例えば買値が140円のとき、スプレッドが1銭(0.01円)なら売値は139.99円です。1万通貨分の取引の場合、実質的に100円のコストが発生するといえます。
このように、外貨預金とFXとではコストのかかりかたが異なりますが、いずれにしても手数料が発生することに変わりはありません。
ドルを買う際の注意点3.外貨預金はペイオフ対象外
外貨預金が預金保険制度(ペイオフ)の対象外であることは、知っておきたいポイントです。金融機関が破綻した時には、外貨預金は保護されません。
仮に外貨を預け入れた銀行が破綻した場合、その銀行に残った財産から弁済がなされることとなります。しかし現実に破綻した銀行から預金の全額が返ってくることは期待できないでしょう。
若山卓也(ファイナンシャル・プランナー)
ドルを買う際の注意点4.ドルを買う際の注意点4.FXは取引時間に注意
FXは、月曜朝~土曜未明まで24時間売買できますが、取引量が少ない時間帯に取引するとスプレッドが拡大し、不利な条件下での売買を強いられる可能性があります。
FX会社は銀行間が通貨を売買する「インターバンク市場」の取引を基に、レートを提示しています。
一般的に、取引が活況なほどインターバンク市場における価格形成も安定し、スプレッドは小さくなる傾向です。
しかしインターバンク市場が閑散だと取引価格が不安定となり、FX会社が顧客に提示するレートも安定しません。
その結果、スプレッドが拡大しやすくなる傾向にあります。小さいスプレッドで取引するには、取引が閑散となりやすい時間帯を避けることが大切です。
若山卓也(ファイナンシャル・プランナー)
円安の時にドルを買うならここ!おすすめのFX証券会社
FXを通じて米ドルを買うためには、専用の口座を開設する必要があります。初心者は、以下5つのポイントに注目して選ぶとよいでしょう。
- 最低取引単位
- スプレッド
- スワップポイント
- 取引ツール
- 口座開設キャンペーン
■最低取引単位
初心者は、小さい金額で取引できるように最低取引単位が小さい会社を選ぶのがおすすめです。
例えば、最低取引単位が1万通貨の会社で米ドル/円を取引する場合、1米ドル=140円だと140万円単位で取引することになりますが、1,000通貨単位なら14万円から取引を始められます。
■スプレッド
スプレッドの小ささも大切です。FXにおける実質的な手数料で、会社によって異なるため注意が必要です。できるだけ小さいスプレッドを提供する会社を選びましょう。
■スワップポイント
スワップポイントも、FX会社によって異なります。各社が「スワップカレンダー」などの名前で公表する実績を確認し、比較しながらできるだけ大きなスワップポイントが生じている会社を選びたいところです。
■取引ツール
取引ツールもチェックしましょう。FX会社の多くは取引ツールを無料で提供していますが、機能はそれぞれに異なります。チャートに表示できる指標や描画ツールなど、機能が充実しているものを選ぶようにしましょう。
若山卓也(ファイナンシャル・プランナー)
これらを総合的に見て、おすすめできるFX会社を3つ紹介します。
・FXネオ(GMOクリック証券)
・みんなのFX(トレイダーズ証券)
・SBI FXトレード
おすすめのFX会社:FXネオ(GMOクリック証券)
最低取引単位 | 1,000通貨 |
---|---|
通貨ペアの数 | 20種類 |
スプレッド (米ドル/円)(※1) |
0.2銭(0.002円) |
スワップポイント (米ドル/円)(※2) |
216円 |
口座開設スピード (取引開始まで) |
最短当日 |
「FXネオ」は、GMOクリック証券が運営するサービスです。最低取引単位は1,000通貨のため、比較的小さな金額で取引を始めることができます。
FXネオでおすすめしたい取引ツールは「プラチナチャート(PLATINUM CHART)」です。38種類のテクニカル指標と25種類の描画ツールで、チャート分析をサポートしてくれるでしょう。発注機能も搭載しているため、いちいちツールを切り替える必要もありません。
若山卓也(ファイナンシャル・プランナー)
おすすめのFX会社:みんなのFX(トレイダーズ証券)
最低取引単位 | 1,000通貨 |
---|---|
通貨ペアの数 | 34種類 |
スプレッド (米ドル/円)(※1) |
0.2銭 |
スワップポイント (米ドル/円)(※2) |
220円 |
口座開設スピード (取引開始まで) |
最短当日 |
「みんなのFX」は、トレイダーズ証券が提供するサービスです。最低取引単位は1,000通貨ですから、初心者も無理のない範囲で取引しやすいでしょう。ただし、「ロシアルーブル/円」と「ハンガリーフォリント/円」は1万通貨単位です。
みんなのFXでは、取引ツールとして「トレーディングビュー(Trading View)」を提供しています。85種類のテクニカル指標と81種類の描画ツールを表示させることができ、本格的にFXデビューしたい人もきっと満足できるでしょう。
若山卓也(ファイナンシャル・プランナー)
おすすめのFX会社:SBI FXトレード
最低取引単位 | 1通貨 |
---|---|
通貨ペアの数 | 34種類 |
スプレッド (米ドル/円)(※1) |
0.18銭(100万通貨以下) |
スワップポイント (米ドル/円)(※2) |
209円 |
口座開設スピード (取引開始まで) |
最短当日 |
SBI FXトレードは、SBIグループに属するFX専業の証券会社です。最低取引単位は1単位と非常に小さく、例えば1米ドル=140円なら米ドル/円を140円、280円、420円……といったように極めて少額の取引を行うことができます。
PC向けツール「リッチクライアントネクスト(Rich Client NEXT)」も、十分な機能を備えているので、おすすめです。29種類のテクニカル指標と21種類の描画ツールを活用すれば、自在に研究することができるでしょう。
若山卓也(ファイナンシャル・プランナー)
円安とはどういうこと?
円安とは、日本円の価値が海外の通貨と比べて安くなることです。
米ドル円でいうと、「1米ドル=100円」が「1米ドル=200円」のように数値が大きくなることをいいます。
「100円で買えていた1米ドルが200円に値上がりした」ので、米ドルの価値が高くなり円の価値が安くなった、つまり円安になったといえるのです。
直近の米ドル円でも確認してみましょう。
2021年末は、1米ドル=約115円でしたが、2022年10月までに1米ドル=150円台へと円安が進みました。
その後は、2023年2月にかけて1米ドル=120円台までの円高となり、2023年6月に再び1米ドル=140円台まで円安が進んでいます。
2021年12月……1米ドル=約115円
2022年10月……1米ドル=150円台
2023年2月……1米ドル=120円台
2023年6月……1米ドル=140円台
【米ドル円の推移(2022年1月3日~2023年6月27日)】
このように、ここ最近は円安の状態が続いています。
円安時のメリット
円安が進むと、輸出企業の利益を押し上げる効果が期待できます。なぜなら同じ商品を同一価格で販売しても、円に換算したときの売上高が上昇するからです。
例えば、1万米ドルの商品を輸出するケースで考えてみましょう。
円換算したときの金額は、1米ドル=100円なら100万円ですが、1米ドル=120円なら120万円、1米ドル=140円なら140万円と、円安が進むほど増加することがわかります。
【1万米ドルの商品を輸出するときの売上高(円ベース)】
・1米ドル=140円:140万円
・ 1米ドル=120円:120万円
・1米ドル=100円:100万円
また円安は、訪日外国人を呼び込む効果にも期待できます。なぜなら円の値下がりは、外国人から見れば旅行費用を押し下げる効果があるからです。
例えば、日本で1万円の商品を買う場合、1米ドル=100円なら100米ドル必要ですが、1米ドル=120円なら約83米ドル、1米ドル=140円なら約71米ドルと、より小さい負担で買えることとなります。
【1万円の商品を購入するときの費用(米ドルベース)】
・1米ドル=140円:71.43米ドル
・1米ドル=120円:83.33米ドル
・1米ドル=100円:100米ドル
円安時のデメリット
円安の代表的なデメリットは、物価の上昇です。
円の価値が下がると、輸入するにはより多くの日本円を支払わなければなりません。
例えば、1万米ドルの商品を輸入するとき、1米ドル=100円なら100万円で輸入できますが、1米ドル=120円なら120万円、1米ドル=140円なら140万円と、円安が進むほど輸入費用が増加することがわかります。
これが国内での販売価格に転嫁され、インフレの要因となります。
【1万米ドルの商品を輸入するときの費用(円ベース)】
・1米ドル=140円:140万円
・1米ドル=120円:120万円
・1米ドル=100円:100万円
海外旅行費の増加も代表的なデメリットの一つです。上述の通り円安は、訪日外国人の旅行費を減少させますが、反対に私たちが海外へ行く場合の費用は増加します。
例えば、宿泊費1,000米ドルのホテルに泊まる場合、1米ドル=100円なら10万円ですが、1米ドル=120円なら12万円を支払わなければいけません。
【1,000米ドルのホテルに宿泊するときに費用(円ベース)】
・1米ドル=140円:14万円
・1米ドル=120円:12万円
・1米ドル=100円:10万円
円安が続くとどうなる?
円安が進展し続けると電気代が高騰します。その結果、広範な品目でインフレが生じると考えられます。
日本は、発電のほとんどを石炭などの化石燃料でまかなっており、非化石発電比率は27.1%しかありません(2021年度 出典:経済産業省 2021年度エネルギー需給実績)。
また化石燃料は、ほとんどが輸入で調達されているため、エネルギー自給率(※)はさらに低下します。
※エネルギー自給率:一次エネルギーの国内供給に対する国内産出の割合
化石燃料:主に石炭、石油、天然ガスなどを燃料とする
非化石燃料:木材、廃タイヤ、廃プラスチックなどを燃料とする
こういった背景から円安は化石燃料の輸入費を招き、発電コストを増加させます。発電会社がコストの増加に耐えられなくなれば、電気代を上昇させることとなるでしょう。
電気を使わない企業はほとんどないので、電気代の上昇は多くの企業にとって利益を圧迫する要因の一つです。
そのため、一部の品目だけでなくさまざまな商品で値上げが実施され、インフレにつながると考えられます。
Q&A
また米ドルの買いは、円安だけが収益源ではありません。米国は、日本より金利が高い傾向にあるため、米ドルを買うと円より大きな利子収入が期待できます。
つまり、金利を上回る円高が起きさえしなければ利益が残るので、円安を予想する場合に米ドルを買うことは合理的な判断といえるでしょう。
思惑通りに円安が進めば利益を得られます。すでに米ドルを持っている場合は取引を維持したり、買い増しを行ったりする方法もあるでしょう。
反対に将来の円高を予想するなら、為替差損を避けるため米ドルは日本円に戻しておくのがおすすめです。まだ米ドルを持っていない場合は、円安が期待できるようになるまで取引を始めないほうがよいでしょう。
FXにおける米ドルの売り(ショート)を行う場合、取引時点では損益の状況は確定しません。売りを行った時点よりも円安が進めば損失になり、円高となれば利益となります。それまで円安傾向にあったとしても、さらに円が値下がりする可能性はあるため注意しましょう。
円安は、輸出会社の利益を押し上げたり、訪日外国人が増加したりする要因となります。しかし、輸入会社にとっては減益要因となったり、日本人の海外旅行費を増加させたりする効果があります。米ドルなど海外資産を持っている人は資産が増えますが、そうでない人は物価の上昇から資産を減らすかもしれません。円高は、その逆の動きが起こります。
このように、円安と円高にはそれぞれに一長一短があり、単純に優劣を断定することはできません。
円安とは、外貨に対して円の価値が減少することです。海外から現地通貨で商品を輸入する場合、円安が進むほどより多くの円を支払う必要があります。例えば、1万米ドルの商品を輸入する場合、1米ドル=100円なら100万円ですが、1米ドル=120円なら120万円を支払わなければいけません。
輸入コストの上昇は、国内での販売価格に転嫁されることから物価の上昇を招くと考えられます。
また円安は、外貨建てで資金調達を行う企業にとって債務の増加要因となります。財務が悪化し、体力のない企業ほど経営環境は厳しくなるでしょう。
一方、円安が進むと海外からの投資を呼び込む効果が期待できます。また生産拠点を海外から国内に移す動きも生じるかもしれません。
外貨預金のほか、外国株式や外国債券、外国籍投資信託など、外貨ベースの商品は円安で直接的に値上がりするでしょう。
また円建ての商品も、実質的に外貨建てなら値上がりしやすいと考えられます。海外の資産に投資する投資信託や、国際的には米ドル建てで取引されることが多い金など、円で値段が表示されていても円安が起これば値上がりが起こるでしょう。
また輸出企業やインバウンド関連企業など、円の値下がりによる業績改善が期待できる企業の株式も、円安の恩恵を受けやすい資産です。
証券外務員一種、AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。
Twitter:@FP38346079
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