ここには、酒を回す=秘密も回る=人間関係が回るという円環をビートとラップの反復によって表現する技法が観察される。
移ろいゆくのは“人”であると言わんばかりの関係性への着目に徹したリリックは、JJJの綴る“自分対風景”、あるいはSEEDAの“ヒップホップへのメタ視点”といった構図とは明らかに異なる、“自分×他人”の構造に身を投じ没入する姿勢だ。
彼女の客演仕事がもっとも見事な形でフィットしたQ/N/Kとの「火星」は、さらに鋭い。
「吐きそうになりながら歩いた月曜/昨日飲み干したHennyのボトル眺め思い出す変に/横見たら連れが吐いちゃったゲロ」と、相も変わらず“Hennyのボトル”“吐いちゃったゲロ”という〈水〉の描写を入れつつ、それでも「忍忍ってわかる?紅って意味/帰ったら押し倒してねぇkiss me…」と結ばれるラインで、彼女がまだ愛の水分を欲していることが明かされる。
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