細かいところでは色々あるけど……インディーズ映画を牽引してきた功績の大きさ

――あと、A24作品というと『エブエブ』や『ムーンライト』などのように、多様性やLGBTQを取り入れた映画も多く手がけているイメージがあります。

タッキー:とはいえ、欧米ではA24は白人男性監督の作品が圧倒的に多いという批判的な指摘もあります。確かにアジア系監督や女性監督もいるんですが、まだまだほんの一部の作品に限った話で、とくに女性監督は比率的にもっといてもいいんじゃないかなと個人的に感じますね。

――なるほど……。最後にA24やその作品に対するタッキーさんの評価を改めてうかがいたいです。

タッキー:作家が好きなことやっている海外の映画が、日本でもある程度ちゃんと観られることは、いち映画ファンとして単純に嬉しいことですし、その功績は大きいと思います。細かいところではいろいろありますけど、2010年代後半から存在感が増してきた結果、映画のバラエティが豊かになったことは確かですから。

――マーケティング的に研究し尽くされた大作映画のセオリーとは違う挑戦的な映画を届けてくれる唯一の存在で、同社に取って代わる競合も現状では存在しないと。

タッキー:そもそも監督という作家単位ではなく、A24という配給会社単位で作品が括られ、語られること自体がこれまであまりなかった現象ですよね。90年代のミニシアターブーム後、『ハリー・ポッター』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』などの大作映画が席巻していた2000年代に比べれば、ある意味いまは映画ファンの裾野が広がりやすい環境というか。