失敗に終わった最初の製作委員会
売れっ子アートディレクターである千原徹也監督に、彼が代表を務めるデザインオフィス「れもんらいふ」にて、映画製作の工程について語ってもらった。金髪姿の千原監督はいかにもクリエイターっぽいルックスだが、彼の話を聞くと『アイスクリームフィーバー』は単におしゃれなだけの映画ではないことが感じられるはずだ。
幼い頃から映画が好きだった千原監督は「映画製作をデザインする」というコンセプトで企画を立ち上げたものの、当初はうまく進まなかったという。
千原「映画監督であることを意識しすぎて、映画製作委員会に対して遠慮してしまっていたんです。アートディレクターの場合は、自分がいいなと思ったキャストや楽曲を自由に選び、自分からクライアントに連絡して、OKをもらっていたんです。でも、自分で動こうとすると、『それは映画監督の仕事じゃない』と言われるし、製作委員会からは『もう少し、今の客に寄せた楽曲のほうがいいのでは』とか『感動のポイントがあと2つは欲しい』などと言われました。製作委員会の方たちは映画業界のプロですから、僕もひとつひとつ許可をもらいながら進めようとしたんですが、それだと思うような映画づくりにはならなかった。そのうちコロナで中断することになり、1社が抜けると他の会社も抜けて、一度チームは解体することになったんです(苦笑)」
スタートにつまずいてしまった千原監督だが、そこで仕切り直し、「映画製作をデザインする」という最初のコンセプトに立ち戻った。映画監督という立場に囚われず、アートディレクターとして培ってきたスキルと人脈を活かして、独自の映画づくりを始める。撮影にはフォトグラファーの今城純を起用。川上未映子からも、そのスタイルを後押しされた。
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