「投資」というと、以前は中高年の男性ばかりのイメージでしたが、今は若い女性のあいだでも取り組む方が増えています。数ある投資の中でも「投資信託」は初心者でも比較的始めやすいと人気です。投資信託にはどんなメリットがあるのか、どうやって選べばいいのか詳しく解説します。
みんないくら貯めてる?20代女性のお金事情
まずは、20代の女性のお金事情をチェックしてみましょう。SMBCコンシューマーファイナンス株式会社が2017年に行った調査によると、20代女性の平均貯蓄額は「104万円」でした。
ただ、同じ20代でも学生やパート・アルバイトの平均貯蓄額が50万円前後なのに対し、会社員は200万円を超えていて、働き方や生活スタイルによってかなり差がある様子が読み取れます。会社員としてフルタイムで勤務している方が収入が多いので、貯金もしやすいということでしょう。
ちなみに、2019年に行われた厚生労働省の調査によると、世帯主が29歳以下の世帯の平均所得は世帯では約362万円、1人あたり約208万円でした。
20代女性で投資している人はどれくらい?
では、20代で投資に取り組んでいる女性の割合はどれくらいなのでしょうか。
金融庁が2015年に公表した調査では20代女性の投資経験率は「8.7%」でした。しかし、その後年金や老後資金が不足するといったニュースがあったこともあり、投資に興味を持つ人も増えたようです。またスマホ1つで簡単に投資を始められるアプリが誕生するなど、投資へのハードルも低くなりました。
スパークス・アセット・マネジメント株式会社が投資経験者を対象に行った調査(2019年)では、20代女性投資家の約4割が「今年、投資を始めた」と答えています。ちなみに投資経験年数「1~3年」と答えた人も4割で、あわせて8割以上はまだ最近始めたばかりということです。
4MEEE株式会社が2020年に20代・30代の未婚女性を対象に行った調査では、投資や資産運用をしていると答えた人が「33.2%」にのぼりました。
2020年は新型コロナウイルスの影響で株価が大きく下がったことから、それをきっかけに投資家デビューする人も増えました。日経マネーの「2020年個人投資家調査」によると2020年に投資を始めた人の半数以上が20代・30代の若年層だったそうです。
近年は若い人のあいだでも投資をスタートする動きが活発になっています。
20代から女性が投資をはじめるメリットは?
投資を始めるなら、なるべく早くから始めた方が有利だと言われています。特に20代女性には投資を始めることで次のようなメリットがあります。
20代は、自由に使えるお金も時間も多い時期
20代は、ほかの年代と比べて平均収入は低いものの、自分のためだけに自由に使える金額は30代・40代よりも多いという調査結果があります。
これは、まだ住宅ローンや子どもの教育費の負担がない方も多いからでしょう。人生の中で特に大きな出費は、30代以降で迎えることが多いです。
・結婚……挙式・披露宴・披露パーティーの総額の平均:約350万円
- 教育資金……子どもの進学費用の平均準備額:月およそ1万5,000円
- 住宅購入……マンション購入価格の平均:約4,400万円
- 老後……高齢世帯の平均消費支出の平均:月およそ25万円
また、20代はお金だけでなく自由に使える「時間」も多い傾向があります。お金も時間も投資にとって必要不可欠なもので、多いほど有利です。
若いうちに始めれば、時間を味方にできる
若さ=投資できる期間の長さも、投資をするうえで有利なポイントです。
もし、老後に退職金で投資を始めるとなると、今後の生活のことや増やせる期間のことを考えて思い切った判断はしにくくなります。しかし、若ければ失敗してもリカバリーできる時間的余裕があるので、リスクを取った投資にも挑戦しやすいでしょう。
また、同じくらいのリスクの商品を選んだとしても、投資期間が長く取れるほど「複利」のメリットが大きくなります。複利とは、投資で得られた利子にさらに利子がつくことです。元本だけでなく利子の分も含めて利子が計算されるので、どんどん増えていきます。
たとえば、100万円を年3%で運用すると、単利(利子には利子がつかない)では30年後には「190万円」です。それが複利(利子にも利子がつく)では30年後は「240万円」以上になります。長期間に渡って投資で出た利益を投資に回し続ければ、それだけ大きな利益が期待できます。
女性は投資に向いている!?
また、一般的な傾向として女性は男性よりもお金に対して堅実でまめな方が多く、生活に密着したサービスの流行にも敏感です。
MUFG資産形成研究所の「金融リテラシー1万人調査」では、若年層の男性は自分の投資やお金の知識について自信過剰気味ですが、女性は等身大の認識をしていると報告されています。そういった点からも、女性は投資に向いている傾向があるといえるでしょう。
20代女性におすすめの投資
ひとくちに「投資」といってもさまざまな種類があります。投資初心者の若い方でも取り組みやすくおすすめなのが以下のような投資先です。
リスクをできるだけ抑えたいなら「国債」
「投資に興味はあるけど、お金が減るのはこわい!」という方は多くいます。特に堅実な女性ほどそう考える傾向があります。
そんな方には、国債はいかがでしょうか。その名の通り、「国が発行している債券」です。投資というくくりではありますが、日本という国が破綻しない限り、元本割れ(マイナス)になることはありません。
個人向け国債は3年・5年・10年と期間が決まっていて自分で選択します。最低でも年0.05%の金利が保障されています。リスクが低いのでリターン(得られる利益)も低めですが、それでも銀行にそのまま預けておくよりは増えるでしょう。1万円から購入することができますよ。
株主優待も魅力!本格的に取り組むなら「株式投資」
株式会社が資金調達のために発行する「株式」を購入することで、その値上がり益や配当金、株主優待を狙えるのが「株式投資」です。
株式投資は、以前は数十万円、数百万円といった元手資金が必要でしたが、今は1,000円未満の少額からでも取り組めるようになりました。
なかには買い物で貯めたポイントで株が買えるサービスなども出てきていて、手軽に始められるアプリもあります。株式投資を始めるためのハードルは年々下がってきているといえるでしょう。
企業の事業内容や直近の値動きを分析するなどして、利益が狙えそうな会社の株を自分で見つけて購入します。知識は必要ですしリスクもありますが、その分うまくいったときには大きなリターンが得られます。
運用はプロにお任せ!初心者でも始めやすい「投資信託」
投資信託は多くの投資家から集めたお金を、運用のプロが株式・債券・不動産など適切な投資先を見つけてバランスよく投資・運用してくれる商品です。
プロにお願いする分、手数料はかかりますが、自分は運用方針を選ぶだけであとの細かいところは「おまかせ」になります。自分の知識に自信がない方や銘柄選びの時間がなかなか取れない忙しい方でも取り組みやすいでしょう。
また1つに集中するのではなく、いくつもの銘柄に分散して投資することでどこか1つがダメになってもほかで補完できます。投資信託なら、投資資金が少なくても1本持っているだけでいくつもの資産や銘柄に投資しているのと同じような効果があるため、リスクを抑えることができます。
このような特徴から、投資信託は投資を始めたばかりの初心者にも人気です。
20代女性が投資信託を選ぶ際のポイント
数ある投資の中から「投資信託」を選んだら、次は投資信託のなかでどれに投資するべきかで悩むかもしれませんね。現在、投資先として選べる公募の投資信託は6,000本以上あります。以下のようなポイントに気を付けて選びましょう。
どこの何に投資するものなのか
投資信託は、その投資エリアや投資資産によってさまざま種類があります。ざっくりと分類すると、次のとおりです。
投資エリア | |||
投資資産 | 国内 | 海外 | |
株式 | 国内株式 | 海外株式 | |
債券 | 国内債券 | 海外債券 | |
不動産(REIT) | 国内REIT | 海外REIT |
投資資産はこの3つ以外にもありますし、エリアは同じ海外でも「先進国」「新興国」などより細かく分類されていることもあります。すべてに少しずつ投資する「バランス型」もあります。
できるだけリスクを抑えたいなら「国内債券」が中心のもの、より高いリターンを求めるなら「海外株式」が中心ものものを選ぶなど、投資信託ごとの運用方針を確認して自分の考えに合うものを選びましょう。いくつもの投資信託を自分で組み合わせて理想の状態を作ることもできます。
先述のとおり、若い方はまだ時間的な余裕がありますので、リスクを取った投資にチャレンジして失敗してもリカバリーできます。名前に「株式」や「海外」といった単語が入っている投資信託はリスクが高めな傾向がありますが、こういったものを組み入れてみるのもいいでしょう。
手数料(必要なコスト)
投資信託には、次のような手数料がかかります。
・購入時手数料
- 信託報酬
- 売買委託手数料
- 監査報酬
- 信託財産留保額
この中で特に購入時手数料と信託報酬は、どの投資信託を購入するかによって差があります。投資で得られるリターンはやってみないとわかりませんが、投資にかかるコストは投資する前にわかります。
運用がうまくいっている投資信託でも、コストが高いと自分が得られる利益は少なくなります。できるだけ手数料が安い方法を選びましょう。
投資信託、20代女性におすすめの買い方は?
投資を始めるなら、一度にまとまった金額で購入するより少額ずつコツコツと積み立てていくのがおすすめです。
手元資金が少なくても挑戦できるというのもメリットですが、毎月一定金額ずつ淡々と積み立てていくだけなので、相場の値動きをいちいち気にせずに運用できます。相場に一喜一憂して、焦って高値で買ってしまったり、逆に安値で売ってしまったりといった失敗を防ぐこともできます。
投資信託ならその時の情勢に合わせてプロが中身(投資先)を都度選びなおして適切と思われる状態に保ってくれているはずなので、自分が常に相場と向き合っている必要はありません。ある程度ほったらかしでも大丈夫ですよ。
また、積立投資は「iDeCo(イデコ)」や「つみたてNISA(ニーサ)」といった、国が投資を促すために作った制度とも相性がよくなっています。どちらの制度も、積立投資で得た利益にかかる税金(通常約20%)を非課税にできます。
特につみたてNISAは、金融庁が「長期の積立・分散投資に適している」と認定した投資信託だけ(180本ほど)しか対象にならないので選びやすく、iDeCoと違っていつでもお金を引き出すことができるので将来の予定が立てづらい若い方でも利用しやすいでしょう。
投資信託は、投資初心者の若い女性にもおすすめ!
ここまでご紹介したとおり、最近は若い女性でも投資をスタートさせる人が増えています。投資にはさまざまな種類がありますが、なかでも投資信託はプロに運用をお任せでき、少額からでも始められるので初心者でも取り組みやすいでしょう。
投資信託で市場の動きや購入のしかたなどがわかってきたら、ステップアップして株式投資などに挑戦してみるのもいいですね。もちろんリスクはゼロではありませんが、投資家デビューの最初の一歩にも使えて、税金の優遇措置も受けられて、将来のためにもなる、投資信託は若い女性にもおすすめですよ。
文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所代表)
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強!銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。
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