いまや僕にとってペルー料理の師匠みたいな方なんですけど、荒井隆宏さんの料理を食べたら衝撃を受けて「僕も作りたい!」と。それから働いていた六本木のバーで、ペルー料理を出すようになって、たまらずにこのお店をオープンしましたね。それが2019年の7月1日のことです。
──実際にペルーへ行かれて、料理のやり方とか本場の味は違いました?
サク:料理の味とかスタイルについては、自分のやっていたことが間違っていなかったな、と思ったのが第一印象でした。発見と言えば、ペルーは流通が悪いんですよ。だからこそ、食文化が何百年前から変わっていないし、この不便さが伝統的な料理を保ち続けているんだなと。それは行ってみないと分からなかったですね。山の方で海の幸は食べられないし、海では山の幸は食べられない。だから山の方では川エビのスープが有名だったり、あとはチーズ系ですよね。畜産系のケソフレスコというフレッシュチーズみたいな、シャキシャキしたチーズとかああいうのが種類豊富ですし、アマゾンフルーツを使ったサルサソースとか、現地の食材がそのまま食文化になっています。
──山梨県で江戸前寿司を食べるみたいなことが、ペルーではあり得ないと。
サク:ないですね。かなりの高級料理店じゃないと、食べられないと思いますね。
──じゃあ、地元の人は現地で食べられる伝統食材を、今も食べ続けている。
サク:そういう印象でしたね。それと海側は北と南で名物料理が違いましたけど、アジの開き定食か煮込み定食しかない。どこもそんな感じでしたね。
──と言いますと?
サク:ペスカード・フリートという揚げた魚にサルサソースがかかっているのと、セコ・デ・カブリートという子ヤギのコリアンダー煮込み。ペルーの海岸線はどの店も、この2種類しか出していなかったです。小田原に行ったらかまぼこしか売ってない、みたいな。食べられるものが限られているので、滞在日数が長くなると、どんどん目新しいものがなくなってくるっていう。