30~40代の“社会人あるある”に共感必至

――本書では、中溝さんが若い頃に会社を転々としてきた実体験が随所にちりばめられています。

中溝 僕自身、フリーのライターになるまでに何度か転職しましたが、どれも成功したとはいいがたくて。その頃を振り返ると、「この本に出てくるようなプロ野球選手たちのように、オレも環境に適応していれば良かったな」と思うところが多々あったんです。だから、昔の自分に語りかけるように書きましたね。

――そもそも、どのような転職歴をたどってきたのですか?

中溝 まず、芸大の映像学科を出て新卒で入った映像制作会社を2日で辞めています(笑)。入社早々、レース場で体験ロケみたいなものがあったのですが、そこの駐車場で原付バイクでコケてしまって。その対応をめぐる上司とのやりとりで、この人はこんな感じで新人を𠮟るタイプなのかと見えてしまい、「わかりました。辞めます!」と。次に就職した不動産関係のデザイン会社も、直属の上司の独立騒動があって半年で辞めてしまい、3社目のサッカー関係のデザイン会社では、「ああ、楽しい仕事だな」と思いましたが、そこも結局上司のディレクターとうまくいかず3年弱で辞めることになりました。今思えば、僕も大学生気分が抜けない子どもでしたね。組織で働く、チームの中で生きるというのを理解できていなかった。

――そういった苦い体験を個々の選手に当てはめるようにして……?

中溝 そうですね。30代や40代の社会人なら誰もが通ってきたような、身に覚えのある普遍的な要素を集めて書きました。もともと、20代の頃からプロ野球の選手と監督の関係性は一般社会の上司と部下の関係性とリンクする部分がある、と感じていたので。「なんでもっと自分を評価してくれないんだ」とか、「チャンスさえくれればオレだってもっとできるのに」とか、会社でもみんな一度くらいは思うじゃないですか。そんな時、「プロ野球選手はこんな風に現状を打破したよ」と、そこはしっかりと伝えたいと思いました。