意外な春日の素顔

 興味深かったのは、春日(戸塚純貴)をメインに据えた、Huluで配信中のスピンオフ『たりてるふたり~だが、平常である~』の一幕だ。若林の家族から実家で飼っている猫の名前を聞かれた春日は珍しく言い淀む。

「家で飼っている猫には、春日というより俊影ちゃんの部分を見せてしまっているので、猫の名前を教えてしまうのは、誰にも見せていない私を知られるようで怖いんですな」

 住んでいるアパートの住所まで公開していた春日だが、ピンクのベストも髪型も立ち方も全てが若林プロデュースであり、実は意外なほどに自分をさらけ出していない。しかし、その真面目な部分が行き過ぎて「言われたことをどこまでも忠実にやる」というキャラクターが、前面に出てしまった稀有な存在なのだ。

 春日は、若林にも恋人にも家族にも自分を5%ほどしか見せていないそう。さらには、自分自身でも5%くらいしか自分を理解できていないと分析もしていた。

 これまで何も考えず何も生み出さず、ただただ“春日”というキャラクターを全うしてきただけの春日が、実は一番冷静に自分と向き合っているのではないかと思わせてくれるシーンだった。