◆これぞ田中圭の一本釣り

 第1話ラスト、「どんぞこ」のカウンター席でひたすら枝豆を食べる場面がある。黙々と食べる虎松とこころの様子が長回しで延々捉えられ、ふとしたタイミングで虎松の「結婚しよっか」が響く。カメラがポンと寄り、田中がここぞという表情をする。

 さらに第2話で、こころの実家を訪れる場面。家に入る直前、緊張から呼吸を整える虎松のさりげない表情が素晴らしい。海造の書斎で虎松が、工具で指を切って血が出る瞬間には、首筋にがぶりのニアミスが。

 第3話では、虎松とこころが結婚式の準備を進める中、プランナー役として千葉雄大(『おっさんずラブ-in the sky-』に出演)が友情出演していたり。田中を引き立てるためのお膳立て的な配役がこれでもかと張り巡らされる。

 父親代わりの世々塚幸雄(小手伸也)のむさ苦しい部屋の台所を借りて、虎松が料理する背中のワンショット。恐るべき過去の記憶と向き合う虎松が、こころの愛に包まれて泣き崩れる横顔。すべてが極め付きの名演。『unknown』は、これぞ田中圭の一本釣りのような瞬間がひしめいている。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu