20年後のボーナス
人間にとってもっとも――なんなら死よりも――恐怖なのは、自分のことが誰の話題にも上らない、世界中の誰も自分の存在について考えてくれなくなることではないだろうか。「愛情の反対は嫌悪ではなく無関心」とはよく言ったもの。
もちろん、伴侶や親しい友人だって自分を理解しようとしてくれる。ただ伴侶や友人にできるのは「現在の自分」を現在時点から理解しようとする行為に限る。一方、我が子は「過去の自分」を理解しようとしてくれる。そこに意味を見出そうと、解釈を試みようとしてくれる。自分の過去に、自分の子供が時間差・後追いで価値を付け加えてくれるわけだ。
31歳になった現在時点でのソフィは、父カラムにそれをした。現在時点でのカラムの状況は語られないが、とにかくカラムは20年という時間差で、あのときの苦悩が報われた。親として、これほどの喜びはない。
かつて死ぬ思いをして頑張った分のボーナスが、20年後にドカンと振り込まれるようなもの。これこそが、「一時的なQOLの低下を引き受けてでも親が子に注いだ愛情」という投資の、実は最大のリターンではないか。利回りで言うなら、つみたてNISAなんぞよりずっと割がいい。コスパに引き寄せて言うなら、実に「コスパがいい」
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