続いて、車での張り合いを見ていこう。小見は続ける。
お互いにスター意識の強い、いい意味のライバルだから、こうなったらグラウンド外の見栄合戦になってしまう。
カズがポルシェをポーンとキャッシュで買った。すると北沢が、
「おれはベンツだ」
と500SLを取り寄せる。武田が負けずにタイプの違うポルシェをこれまたポーンとキャッシュで買って、“どうだ”といわんばかりにクラブハウスに乗りつける。
そうしたら柏レイソルに期限付きで移籍した戸塚(注:元日本代表M F戸塚哲也のこと、彼の息子は人気バンドSuchmosのメンバーであるTAIKING)が、
「お前ら、車のことなんかわからないくせに見栄ばっか張っちゃって」
とフェラーリを買って、“まいったか”という顔をして見下したことがあった。
トッププロがそんなことをやるから、他の選手に伝染して国産車は一人もいない。(P149)
全ての固有名詞に、時代を感じる記述である。現代のネット社会でこれだけの放言が連発されれば、即サポーター達から揚げ足を取られることだろう。しかし、ここまであっけらかんと言ってくれた方が、むしろ清々しいというものだ。この時期のヴェルディ戦士達が今も全国的知名度を誇れているのは、Jリーグや“ドーハの悲劇”が注目されただけではなく、露出の過程でそのキャラクターをしっかりと世間に浸透させていたことも一因だと思う。
なお、この項を小見は以下の様に結んでいる。
やんちゃたちは今日も見栄合戦をやめようとしない。
グラウンドの上でも、私生活でも彼らは負けることが嫌いな人種だ。
なんでもトップをめざす彼らのエスカレートはとどまることを知らない。
ちなみにぼくはジャガーに乗っている。(P150)
小見も、十分に“負けることが嫌いな人種”である。