“乃木坂らしさ”を形づくる「転調」

 『ここにはないもの』と『サヨナラの意味』、この2つの楽曲は全く同じ形式による「転調」を使っている。

 「転調」とは。読んで字の如く、曲中で「調(キー)が転じること」で、それはカラオケのリモコンに設置されている「#」と「♭」のボタンをイメージすると理解しやすい。同じメロディでも「#」を押すと音程が高く、「♭」を押すと低くなる。あれはメロディを転調させ、自分の喉にアジャストするための機能なのだ。

 楽曲で用いられる転調には多様なパターンがあり、この限りでないことを前置きとするが、ポップスにおいては最後のサビや終盤の追い込みで、“リモコンボタン”の「#」を1回、または2回押した分の高さに上げる例が頻出する。

 例えば乃木坂46の楽曲でいうと、デビューシングル『ぐるぐるカーテン』(12)は最後に「♯」1回分、17年の初東京ドーム公演(伊藤万理華、中元日芽香のラストコンサートでもあった)でのパフォーマンスが語り継がれる『きっかけ』(16)は2回分の転調。また、西野七瀬が初センターを飾った8th『気づいたら片想い』(14)のラスサビは、「~気付いたら」のワンフレーズごとに「♯」を1つずつ重ねて、計2回分になる仕組みだ。