◆山田裕貴、赤楚衛二がつむぐ名場面
――第3話冒頭、飲み物が底をつく中、ついに雨が降ります。乗客たちは恵みの雨に歓喜します。一方、直哉と優斗にとってはまるで関係性を洗い流すような浄化の雨のように映りました。物語の次なる展開に向けた箸休めとしてとても効果的な場面です。森の中の赤楚さんの表情、タンクトップ姿で静かに雨を浴びる山田さんの静かな佇まい。紛れもない名場面だと思います。脚本から映像になって見たとき、どう思いましたか?
金子:第3話は、お二人の特徴的なお芝居が本当によく映像に出ていると思いました。これはあくまで私の個人的な捉え方ですが、山田さんからは『生まれながらに戸惑っている』『生きていることに傷ついている』というたたずまいを感じます。それはある種の凄みであり、傷を晒すような演技が抜群です。今回の直哉役は、この山田さんの特性を生かすように作り上げたつもりです。
一方、赤楚さんは、『生まれながらに輝いている』『生きる喜びに満ちている』方のように思いました。あの目の輝き、光が差すように訴えかける感じ。第3話の特にラストシーンは、私たち制作陣が直哉と優斗に託したもの、そして山田さんと赤楚さんに感じているものが結実した回だなと思いました。
――いやぁ、山田さんと赤楚さんの表情がほんとうに素晴らしかったです。
金子:山田さんは、若手俳優の中で異質な存在です。単に見栄えがいいとか、そういう次元ではない。身にまとっている詩情感、存在感が、人々の胸を打つのではないかなと思います。そして赤楚さんは、一瞬一瞬、目に焼きつくような表情をこれでもかと繰り出してくださいます。
山田さん、赤楚さん、畑野紗枝役の上白石萌歌さん、そして他の乗客の方たちの煌めきを描くこの作品に関われたことは、私の誇りでもあります。