主人公が置かれているつらい立場も似通っていた。『スパイダーマン:スパイダーバース』の主人公・マイルス少年は、世界を救うヒーローの大役を、自分の能動的意志ではなく引き受けることになる。しかも、正体を隠しているためマイルス個人としては世間から称賛されない。大きなものを背負わされるのに、尊敬をもって頼られないのだ。

 『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジも同様だ。エヴァンゲリオン初号機には乗りたくて乗っているのではない。かと言って、父親であるゲンドウにはほとんど褒められず、期待もされない。こちらも、大きなものを背負わされるのに頼られない。

 両者ともに10代半ば、思春期真っただ中の多感な少年。父親との関係性に悩むという点も同じ。さらに「当初は孤独に戦っていたが、やがて同じような境遇で孤独に戦う仲間の存在が救いになる」という展開も共通している。仲間とは、『スパイダーマン:スパイダーバース』においては別の並行世界のスパイダーマンたち。『エヴァンゲリオン』においては零号機パイロットの綾波レイや弐号機パイロットのアスカのことだ。