──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

 『どうする家康』第22回では、武田の騎馬軍が織田の鉄砲隊の前に惨敗した設楽原の戦いの後、徳川家康(松本潤さん)は信長(岡田准一さん)に臣従せざるをえなくなったという展開となりました。これは平たくいえばドラマにおけるオリジナル設定ですが、『どうする家康』は、家康が主君・信長の命令に逆らいきれず、断腸の思いで正室・瀬名(有村架純さん)と嫡男・松平信康(細田佳央太さん)の2人を粛清せざるをえなくなる……という筋書きになると思われ、その伏線になると考えられます。

 第22回では信康の異常も見られ始めました。昔は虫さえ殺せなかった優しい信康が、設楽原の戦い、そして二俣城の戦いに相次いで参戦した後、夜もまともに眠れず、不安定な様子であることに瀬名は気づき、心配そうでした。信康の母として瀬名が独自に行動し、問題解決を図ろうとしたことが、次回・第23回の「瀬名、覚醒」のメインの内容になるのではないか……と推測されるのですが、今後のドラマの展開に影響する他の事件もいろいろと並列して発生しそうです。本連載のテーマ選びについても迷いましたが、今回は、多くの読者に武田本家の重臣として認識されているであろう穴山梅雪のお話をすることにします。