伝説のタッグが再結成された裏事情
高倉健のハリウッドデビュー作『ザ・ヤクザ』(74)をはじめ、多くの映画の脚本を手掛けてきたポール・シュレイダー監督。ポルノ映画業界を描いた『ハードコアの夜』(79)や緒形拳が三島由紀夫を演じた『MISHIMA A Life in Four Chapters』(85)などの監督作も見逃せない。イーサン・ホーク主演作『魂のゆくえ』(17)はスマッシュヒットし、アカデミー賞脚本賞に初ノミネートされるなど、近年は円熟味を増している。
ニューヨーク在住のポール・シュレイダー監督が、ZOOM取材に応えてくれた。まずマーティン・スコセッシとの関係について語ってくれた。
シュレイダー「マーティンとはある時期まで一緒に映画をつくってきたわけだけど、やがてマーティンはマーティンならではの映画を、僕は僕なりの映画を考えるようになり、進む道が異なってきたので、別々の道を歩もうということになったんだ。でも、決して音信を絶っていたわけではなく、メールでのやりとりはずっとしていたし、年に数回はランチやディナーも一緒にしているよ。今回、『カード・カウンター』を製作する際にお金を集めなくちゃいけなかったんだけど、『スコセッシの名前があると助けになるんじゃないか』という声があって、それで僕からマーティンに『名前を貸してほしい』と頼んだんだ。彼は喜んでOKしてくれた。製作総指揮のクレジットを引き受けてくれたのは、マーティンの好意なんだ。マーティンと僕は、友人として今も付き合いが続いているんだ」
捕虜兵に対する拷問シーンをはじめ、陰惨なバイオレンス描写がウィルの回想として盛り込まれている。暴力、贖罪、強迫観念……。『タクシードライバー』の主人公・トラヴィスのように、ウィルが鏡に映った自分を見つめるシーンもある。ポール・シュレイダー作品の集大成的な作品ではないだろうか。