◆新名誠役を通じた演技が“完成形”へ 

ドラマ『あなたがしてくれなくても』第9話より ©フジテレビ
9話より
 さて、気持ちが揺れ動く新名は、どういうけじめをつけたか。転職先が決まり、フタバ建設勤務の最終日、みちとビールで乾杯し、ラーメンをすする。新名は、ほんとうに楽しそうだ。川辺の橋での帰り際、このままじゃ帰れないと思った新名が、瞳を潤ませる。

 やっぱりくるんだな、岩ちゃんが瞳を潤ませる魂の“潤み典”が。みちの元へ走り、連れ去る。この衝動、この情動。うるうるしてるばかりじゃない。やるときはやるんだ。新名の走り方に、岩田が込める強い思いが伝わる。

 そのあと、退職を祝うために待っていた楓に「離婚」を切り出す。もはや迷いはない。潤みもないし、微動もない。ただ目の前の人に、その二文字を言う。

 いたってシンプルな表情だが、これは、掛け値なしで完璧な演技だ。クライマックスへ向けて、新名誠役を通じた岩田剛典の演技が“完成形”に近づいている。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu