◆岩田剛典モードで積み上げる

 複雑に絡み合う新名の心情が、手に取るように伝わってくる。楓との肉体の関係は破綻しているが、精神的な結びつきが完全に断たれたわけでもない。彼女を傷つけたくはない。新名は、まだ妻への情を感じている。

 楓がホテルに泊まり、帰らない晩は、ひとり、キッチンでカップラーメンをすする。そう、新名はひとりだと料理をしない。新名の心のひだを解くように、畳み掛けるように演じ込まれる。

 岩田剛典モードのスイッチが入り、怒涛の演技が積み上げられる。すでに演技の沸点は超えている。新名の心に触れ、その複雑さを表現する岩田の役作りの丹念さ、その丁寧な仕事ぶりを感じる。